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「少女漫画脳だから恋愛に興味が持てない」(あるいは神風怪盗ジャンヌの背中)

友人の「少女漫画脳だから恋愛に興味が持てない」という話がおもしろかったので書き記しておく。
誤字ではない。「少女漫画脳だから恋に恋している」のではないのだ。「理想が高いあまり恋愛ができない」のでも「白馬の王子様にあこがれすぎていて現実じゃ満足できない」のでもない。俗にいう誰もが連想する「少女漫画脳」とこの文章に登場するそれは少しニュアンスが違うと思う。


彼女、そしてわたしは23歳。小学生のころは親の小言を聞き流しながら漫画を読みあさった。当時自分たちの周り一番人気があったのはおそらく間違いなく「りぼん」だ。今の小学生には「ちゃお」の方が人気があるらしいけど、当時はそうだった。「なかよし」も加えた3誌を毎月読んでたわけです。付録を組み立てたり、応募者全員サービスで筆箱とかもらったりしてたわけです。


で、友人いわく、彼女の少女漫画脳をつくりあげたのは種村有菜だと。種村さんの絵はキラキラひらひらふわふわしていてみんなが真似して描いていた記憶がある。ありなっちの絵はすごいいろんな人に影響を与えたのだろうし、実際はじめて出てきたとき衝撃だった。同じ白黒印刷のザラザラした紙のはずなのに、この人が書く十数ページだけが輝いて見える…!神風怪盗ジャンヌの話だけで、わたしたちたぶん1日費やせる。当時、ジャンヌに出てきた微妙にエロを連想させるシーンに度肝を抜かれたことをまざまざと思い出します。えっこれりぼんで…と思ったよね。なんていうかどう考えても、当時の自分たちの漫画体験を掘り起こすと彼女なしでは語れない。

種村有菜の描く漫画のヒロインはどの作品でも、完璧なんですね。美少女でお金持ちで運動神経もよくてクラスで人望もあつくて友達もたくさん(というケースが多々)。ちょっとドジなところもあってお高くとまっているわけでなく憎めなくて、家族関係に微妙にゆがんだものを持ってアンニュイだったりもするけどそれすらプラス。けなげで元気でかわいくて、あまりにそろっててムカつくこともありつつ応援したい、同性でもすきになっちゃうタイプだ。

そういうヒロインたちが恋愛をするのをどういう気持ちで読んでいたか。完全に他人なのだ。だって1ミリもかぶってないんだもん。親に隠れてりぼん読んでるわたしとは全然違うんだもん。だから、まろんちゃんすてき!と手放しで言うことはできるけど、恋愛いいなーわたしもこういう恋をしたい!とは到底結びつかなかったんだって。

むしろ、恋愛という人間関係の妙はこういう選ばれた女の子たちの特権なんだ、と強固に思うようになっていった気がする。あーこういう子たちがヒロインになれるし、なっていいんだ。妬みではなくて自然に、こういう女の子を好きになる男はいるだろうと論理的に思える。強くて美しいひとたち。地味で平凡な自分、とは違う世界。

俗にいう「少女漫画脳」は何の変哲もないわたしでもすきになってくれるひとがいるんだもの!なのかもしれない。でもわたしがすきだった漫画やアニメは、ジャンヌはこどちゃはカードキャプターさくらは、強くてかっこいいヒロインが自分の魅力を最大限発揮して引きつけて巻き込んで応援させて好きにならせて、さらに強くなっていく物語だったから。

「ジャンヌ症候群」の女たちの嫌いな漫画は「君に届け」と「僕等がいた」だと思うんだよねえ、と彼女は笑った*1。どちらもあまり好きではないのでわたしも笑った。クラスでも目立たない、これといってとびぬけたもののない女子があの狭い教室で、1番輝いてる男の子とくっついてしまえる、そのシンデレラストーリーがどうもよくわからない。女の子に圧倒的な魅力がない恋愛を読んでもときめけない。

まろんちゃんと稚空くんの色恋も友達ののろけもあんまり自分の中では変わらん、と空になったビールのジョッキを手で弄びながら彼女は言った。だってあんなの、漫画じゃん。あるいは、漫画的な人々のものじゃん。だからわたしには関係のない世界なんだ。あの世界を外側から見て、愛してたからこそ、自分には全然接点のない行為なんだって、強く信じちゃってるんだ。恋愛にどうやって興味を持ったらいいのかよくわからない。ヒロインになれるなんて思ってない。だからやっぱり、そういう意味で強く“少女漫画脳”なんだよ。発売日に本屋でりぼんを買って走って家に帰ってページを繰った、あのまんまなんだ。周りの誰かの話を聞いていても、連載の1つにしか思えないんだよね。ねえねえ彼氏がね、っていうのろけは、今月のお話なのだ。次号が楽しみだな、とは思うけどそれだけなんだ。いろんなヒロインがいるなーと思う、だけで。わたしはただの読者。


なるほど“少女漫画脳”。
白馬の王子様方向にアンテナがまず立ってないし、やってくるなんて思ってない。っていう。


追記:
種村有菜さんご本人からリプライをいただいてしまった…ので6月2日はありな記念日(競馬ではない)


*1:とはいえわたしも友人も決して、この2つの漫画を嫌いなわけではないですよ。「君届」はいつまで引き伸ばすんだよ!と思いつつ読んじゃうし、「僕等がいた」は一部までがすきでした。でもどっちもイライラするよね!すっごく褒め言葉