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好きすぎて100回くらい読んでいる、伝説の夜のこと(「はてなインターネット文学賞」に寄せて)

はてな「はてなインターネット文学賞」を実施するそうで、あなたがこれぞインターネット文学!と思うものを教えてください、という依頼をもらった。え〜なんだろう。いっぱい思いつく。

いろいろ考えてみたけど、私の中では個人ブログの大きな魅力といえば、愛のこもった熱い語りが読めることだ。だいたいの場合、そのジャンルについてよく知らなくても楽しい。すごい。

というわけで、私の記憶に残る超超大好きなエントリーがこちらの2つ。2014年のジャニーズカウントダウンコンサートを目撃した人による「あの日」の克明な記録です(大げさ)(だけどそれくらい価値がある!)

伝説のカウコン

今回フジテレビでの放送がなかった「Johnnys' Countdown 2014ー2015」で一体何が起こったのか?
moarh.hatenablog.jp
【実録ルポ】本当にあったマッチカウントダウン
sasagimame.hatenablog.com

ジャニーズカウントダウンコンサート、略して「カウコン」とは、毎年大晦日の夜に年をまたいで開催されるコンサートのこと。0時を迎える瞬間の前後の数十分はフジテレビで中継されているので「テレビで見るあれか〜」というイメージの人も多いでしょうか。

ジャニーズのグループが多数出演するお祭的なイベントで、高倍率を勝ち抜いて抽選にあたった人のみが現地・東京ドームで参戦できる、豪華かつ長時間のコンサート。現地で見られる人はラッキーで、行けない人からはちょっとした羨望の目で見られる存在なのだ。

しかし、問題の2014年のカウコン、なんとテレビ放送がなかったのです。いや……なんで?何を見て年を越せっていうのよ。てかいったい水道橋で何が起きるんだ?オタクたちは戦々恐々としながら「その日」を迎えたが……という前段です。

さて、2014年から2015年への年越の瞬間、私は例の如く今年も東京ドームに居た。そう、「Johnnys' Countdown 2014ー2015」を見る為に。しかしこのコンサート、後世に語り継がれるべき事件としてジャニーズの歴史に深く刻み込まれたので、せっかくなのでその目撃者として記しておきたい。

これは、本当にあった12月31日の話である。

タイトルにある「本当にあったマッチカウントダウン」の通り、マッチこと近藤真彦さんのオンステージが続き、ほぼマッチのコンサートと化すという衝撃の結末に終わったこの年のカウコン。

どちらのエントリも書き出しから最高だ。「目撃者」という言葉があまりにも正しい。

ともに名文だらけなのでとにかく全文読んでほしいのだが、あの場に居合わせた5万人の緊迫感とズッコケ感が伝わってきて、何度読んでも声を出して笑ってしまう。私はこれまでにどっちも100回は読んでいると思う。好きすぎて。

マッチは言う。「このあとも後輩と一緒に僕の曲をちょっとだけ歌いますので」………っ!!!(瀕死)この“ちょっとだけ”というのは、会場の空気を敏感に感じ取った神マッチが遠慮気味に使った言葉であり、実際のところ“ちょっとだけ”どころか最後までマッチだった。次もマッチ、この次もマッチ、またまたこの次もマッチ。私は完全に死んだ。

それはまるで抜き打ちテストの様だった。FNS歌謡祭であれだけマッチを祭り上げた君たちならこれぐらいの問題は解けるよね、とジャニーズ事務所が果敢に挑んできた。

東京ドームにて偏差値70以下のジャニヲタはみんな死んだ。死体となったジャニヲタたちが夜の水道橋に放たれて、口々に今日の己の不甲斐なさを語った。数時間前まで優越感に浸っていた彼女たちの様子を見ていた在宅組のジャニヲタたちが、今度は優越感に浸ることになった。

「偏差値70以下のジャニヲタはみんな死んだ」の強さ。だいたいみんな死ぬ。

フロートに乗り込み、下手より外周をまわりながら歌い出すマッチ。「お…遅い」呻くヲタ。牛歩とも呼べるスピードで、マッチは4曲かけて半周し、バックステージへたどり着いた。通常のコンサートでいえば1曲で進む行程を、たった一人で歌い上げながら。

希望を失わない瞳で見つめていたそのとき、「スペシャルな人が到着しました」とアナウンス。もしかしてSMAPTOKIO?V6? 嵐?いや…サイレンの音だ!パトカー登場に混乱する客席。現れたのは黒柳徹子だった。

黒柳徹子の登場という非常事態。こういうめちゃくちゃなことで振り回されるジャニーズっておもしろいね……。

ポシェットや携帯電話などの私物を見せながら、マッチとの思い出を話す黒柳徹子。「そのドレスはどこのホテルのカーテンですか?」怖いものなしの堂本光一。「これじゃ徹子の部屋じゃなくて徹子のドームだよ(笑)」飛び出すジャニーズジョーク。我々は徹子のドームに8,500円を払った覚えはなかったのだが…。

かくしてジャニオタの間ではこのカウコンは語り草であり、あの日ドームにいた人もいなかった人もみんなで共有した“事件”であり、このエントリは歴史的価値があるのです。

時は経ち数年後の2021年4月末、近藤真彦さん退所の報の際も多くのオタクがこのエントリを引き合いに出していたし、私ももちろん思い出した。これがちゃんと刻まれてるインターネットって愛しい!

歴史を書き残すということ

今回、あなたの「はてなインターネット文学」だと思えるエントリを教えてねという依頼を受けてから、過去の自分のブクマやTwitterでシェアしたものを漁りまくっていたのだが、多くのブログは久しく更新が止まっており、いくつかのブログは存在自体が消えていて、一抹の寂しさを感じた。でもわかる。私も全然更新してないし……(すみません!)

同時に、残っている熱狂の記録や時事ネタにまつわるあれこれを片っ端から読み返してめっちゃ楽しい…最高…とも思った。ブログって、読むのも書くのも楽しいものだった。

なんというか、まとまった文章を書き残すことってめっちゃ意味があるな〜と改めて思ったのでした。Twitterに一瞬の激情をもちろん叩きつけるのもいいんだけど、ひとまとまりの時間を空気感も含めて伝承できることが素晴らしい。このカウコンみたいに同じイベントがいろんな人の視点で残るのもいい。私たちはみんな歴史の証言者…!

今回紹介した2つは超おもしろくてめちゃくちゃ読まれた最高のやつだけど、別におもしろくなくても、ほとんど読まれなくても、「今」を残しておくのって未来の自分には価値があるんだよね。過去の自分って一番近しい他人だから、タイムカプセルみたいに返ってくる。

初心に戻って、もっとブログ書きたいし読みたいな、という気持ちになれてハッピーでした。私も数日前に、舞台の感想を超超久しぶりにしたためてみたら楽しかった。みんなも久しぶりに書こうぜ!!

はてなブログでは、7月15日(木)から特別お題キャンペーン「はてなインターネット文学賞」を実施しています。この記事はキャンペーンの一環として、もぐもぐさんに「インターネット文学」について執筆いただきました。(はてなブログ

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