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今年読んだ本全部なんて覚えてないけど、だとしたら覚えてる本にはそれなりの意味があるんじゃないか

中高の数年は読んだ本をすべてメモっていたんだけど、怠りはじめて随分がたつ。毎年年末に今年読んだものを思い出そうとするけど数冊しか思い出せない。がっかりだよ、自分の記憶力に。
…なんだけど、要するに思い出せるってことはそれなりに実があったからじゃないの?っていう発想をすることにした。頭の片隅にひっかかっているってことは、きっと読んだあととか読みながら人に話したりTwitterFacebookに書き散らしてたんじゃないかな。なんか言いたかったんじゃないかな。それ以上の意味は…あるかもしれないしないかもしれない。


ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


タイトルが素晴らしいよね…まったくもって直訳なんだけど、とてもいいタイトルだと思う。
9.11をテーマに描かれたこの小説が、震災を経た日本に小説と映画で入ってきた。あれから10年も経った。あれから1年が経った。残された人はちゃんと生きてる。そういう重さ。
読み始めても設定がよくわからないし、空気が揺れないシーンが多いし、そもそも本自体が分厚くて挫折しそうになったけど、後半いろんなものが剥げ落ちていきはじめると、つかまれた。肌がぞわぞわした。
写真の使い方、文字のレイアウト、いろいろ挑戦的なことをやってて読んでて技巧的におもしろい。訳にも製本にも愛を感じる。詳しくは言えないので気になる人は読んでください。うおお、となる箇所がいくつも。
とにかくラストシーンの、恍惚感が最高。
ページをめくる手が震える。見届けて、また数ページ戻ってしまう。何度でも繰り返す。この意味、読んだ人にしか伝わらないのがもどかしい。
映画も見たし悪くなかったけど、いかんせん最後の恍惚は小説体験でしか出せないなって。話以上に見せ方がとても印象的だった。重たいし好き嫌いありそうだし(エンタメでも純文学でもないもんなー)すすめにくいけど、翻訳もののよさってこの感じだよね、と思った。


「喜嶋先生の静かな世界」

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)


なんでもっと早く読まなかったんだ!!と地団駄を踏んだ。森博嗣ずるいよ……西尾維新的というかラノベぽいの書きまくってる傍らこんなのしれっと書き下ろしているなんて…。

あらすじを一言で言えば、ある研究者の半生です。勉強は嫌いだけど物理は大好きで、本とコンピュータに熱中して、学校の勉強は放り投げて興味があることを自分の力でガツガツ勉強して。きっと大学には今までと違う何かがあると思って、でもその期待はかなえられず絶望。それでも研究が楽しいと思えるきっかけに出会って、研究室や「計算機センタ」にこもって寝食忘れて実験や数式展開に没頭して、尊敬できる先輩に指導教官に出会い、何だろう学問って、研究って、働くって、と考え続ける。

僕は文字を読むことが不得意だったから、小学生のときには、勉強が大嫌いだった。そんなに本が嫌いだったのに、4年生のときだったと思う、僕は区の図書館に1人で入った。その頃、僕は電波というものに興味を持っていたから、それに関する本を探そうと思った。その1冊を読むことで得られた経験が、たぶん僕の人生を決めただろう。意味のわからないものに直面したとき、それを意味のわかるものに変えていくプロセス、それはとても楽しかった。考えて考えて考え抜けば、意味の通る解釈がやがて僕に訪れる。そういう体験だった。小さかった僕は、それを神様のご褒美だと考えた。

手当たり次第すすめていた時期があった。学問とはなにか、についてフィクションの世界でここまで雄弁に語れるのすごい。すごく美しい小説で好きなシーンを何度も読み返した。何度でも言うけど森博嗣はわたしの文章に影響を与えすぎている。読む度に思う。血と肉。


「少女民俗学」

少女民俗学―世紀末の神話をつむぐ「巫女の末裔」 (光文社文庫)

少女民俗学―世紀末の神話をつむぐ「巫女の末裔」 (光文社文庫)


今年読んだなかで一番ぐっときたかも。女子文化だいすきだよ……。かわいいとは、少女的なものとはなんぞや、をいろんなところから考えていく。手書きの文字の話、モノローグやポエムの話、学校での振るまいの話、アイドルの話、リカちゃん人形と遊びの話、卒業の話。全部おもしろい。

ギリシャ神話や日本神話になぜ無数の神々が存在するか。ビックリマンシールのキャラクターはなぜ772枚あるのか。「無数」に存在することこそが、民俗社会における神の条件である。

刊行から20年以上経ってるけど、だからこそ今の文脈に組み入れたらどこにどんなふうに使えるかな?って考えながら楽しく読める。大塚英志が知らない事例をわたしは知ってるから(時代が違うから当たり前)その幸福な空白を感じながら読み進められる。この引用なんて、AKBの話として書かれていても全然使えるわけで。文化は似たようなところをぐるぐるまわっていておもしろい。というわけで近ごろは、自分の生まれる前のカルチャー分析ド真ん中の本を読みたいと思っている。

大塚英志さんの本、今まで全然触れてこなかったけど、こじつける力が抜群だな。心から褒め言葉ね。えっそういう論展開なの?とか、そ、それはちょっと無理があるのでは…って思う箇所もいくつもあるんだけど、読み進めるうちにまぁそういう見方もできるかなーってなんとなく納得しちゃう。すごい大事だよね、そのこじつけ力。わたしも精進したい。鮮やかに手品みたいにおさめられるようにしたい。


AKB48白熱論争」

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)


おもしろかった。AKBがどうこうという以上に、集団で話してるうちに、あーそれだよそれ!それが言いたかった!とか、でもそのへんを考えるとこういうのはどう?、みたいになっていくその過程が記されてるものが、一般的に好きだ。題材はなんであれ共通の好きなものに対して言葉を吐きまくるのは見てておもしろい。フェチズムはひたすらに個人の主観によって語られる方が楽しいね。正当化なんてなくたっていいや。わたしももっと偏愛したい。偏愛を文字にしたい。偏愛を撒き散らしたい。別に誰のためでもなく、社会を斬るわけでもなく、金にもならないものを。愛に生きましょう。ラブ・イズ・ライフ!!


「母がしんどい」

母がしんどい

母がしんどい


読んでてこっちもしんどいぜ…。前から本屋でつまれていたのは知っていて、Twitterでもちらちらと感想を見ていて、Kindleバージョンが少し安くなっていたので買ったのだけど、いやーこれは……ヤバいよ…。俗にいう毒親を持って生きてきた主人公の半生がコミックになってるんだけど、常識って脆いなって心から思う。親子関係ってどうがんばっても否定できないから苦しいね。逃げ場所がない。。
結構大規模な反抗期的なものはありつつも母親と比較的平和に生きてるわたしでも相当つらい気持ちになったから、マジで死人が出ると思う。何かしらの確執を母親といだいてきた女の人が読んだら読み進められなくて手を止めてしまうページ出てくると思う。なにより、これを描ききった作者の人がすごすぎる。と思った。
ものすごかった…人に読ませたいって思っても、Kindleは貸せない。結構困る。って知った。


ジャニヲタあるある

ジャニヲタあるある

ジャニヲタあるある


すごいおもしろいwww TwitterとAmazonで奇跡の好/高評価の本だったので気になって買ってみた。
ジャニヲタのお姉さんたちの話は大好きすぎていくら聞いてても飽きない。いろんな文化があって共通認識があって、すごくおもしろい。女の子の文化をつくるスピードとキメの細かさ本当にすごい。
ジャニヲタ本人じゃなくて「ジャニヲタが身近にいる人たち」の対談が大変よかった。彼氏、友人、母親、同僚の4人。あー水色の封筒が届くと電話かかってくるよね(※コンサートのチケットがやってくるお決まりの封筒)、彼女に海外旅行誘われて予約まで全部してくれてあれ?と思ったらタキツバのオフィシャルツアー@台湾だったことある、ちらしずしに娘の部屋のうちわ使おうとしたらキレられた、などなど。尽きないなあ。第二弾も発売されるらしい。


「働かないアリに意義がある」

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)


ちょうど1年くらい前に軽くTogetterでまとめてた。
「働かないアリに意義がある」って本がとってもおもしろい - Togetter

ここまで読んだ中で一番おもしろいと思ったのは「間違えるやつがいないと効率よくならない」ってところ。エサとりにいくとき、100%最初のアリのルートをトレースできるようにシュミレートするとそれ以外のやり方発見されない。当たり前だけど。ふらふらするやつがたまに効率よい方法とか道見つける

あるときに決められた最善策、は時間の経過や環境の変化で否応なく劣化していくんだからどうにかしてアップデートしなきゃいけなくて、でもそれって真面目なひとほど難しいんだよなあきっと。っていう。アリの話はものすごくデジタルで数字で処理できるんだけど、だからこそ人間も動物なんだな、あらゆる悩み事はもしかしたらもっと情緒を排した画一的な処理が可能なのかもしれない、と萌える。わたしはそれに萌える。


「非選抜アイドル」

非選抜アイドル (小学館101新書)

非選抜アイドル (小学館101新書)


「AKBの後ろの方の人たち」と一般的にはみなされる子のうちの1人が、現役メンバーが書いている。別に暴露本でも悲惨な感じでも嘆願でもなく、後ろにいるその意味とか意義、「どうしてそれでもやめないの?」って紅白のステージの上にずらりと並ぶ100人以上の女の子たちを見て、テレビのこっちで誰もが感じたことがある気持ちにちゃんと回答してくれてる。だからAKB知らない人こそおもしろく読めるかもしれない。
彼女の彼女なりのステップアップのさまが興味深い。結局適切な夢や目標と、そこに近づくための布石を自力(あるいは事務所の力)でどれだけ用意できるかってことだ。別にアイドルじゃなくたって同じだよね。
AKBに入ってくる子たちは「入る前は自分に自信がなくて夢もなくて」って言う子が結構多い。良かれ悪しかれ多い。いろいろやっていくうちに見つかればいいね、というスタンスなんだけど、どうしても目の前のことにかかりきりになるとここから離れたあと、のこと多分脳裏から離れてしまうように見える。だってファンもつくし順位もつくしねえ。そういう意味ではこの本の筆者、仲谷明香さんの姿勢はすごくニュートラルでいいなーと思う。「地味でおとなしい」中学の同級生だった前田敦子がオーディションに受かったことを知ってから興味を持ってこの世界に踏み込んだ彼女。その近さゆえに冷静だなって。目指す先はセンターじゃなくたっていい。


「桜姫華伝」

桜姫華伝 1 (りぼんマスコットコミックス)

桜姫華伝 1 (りぼんマスコットコミックス)


種村有菜はあんまり語られていないけれど本当に重要な少女漫画家な気がしてる。
でも種村有菜の連載しているその十数年のあいだにリアルにりぼんに触れてない人には馴染みがないんだろうなとも思う。少なくとも安野モヨコ岡崎京子矢沢あいのようには読まれてないよね。
神風怪盗ジャンヌ」である世代の女子に衝撃を与えてから、今りぼんでの連載の最終作になったこれを一気に読んだわけだけど(もうすぐ最終巻が出る)謎に感動してしまった。わたしの知ってるありなっちだけどなんていうか同じような題材でも進化しててすごい…!って思った。昔は読んでたけど、みたいな人に目通してほしい…!
2月からはマーガレットに移動して連載開始する。Cookieでもないし、どんなふうになるのか楽しみ。ありなっち、わたしの青春のスーパー重要な1ページだなあって。