2012年の紅白、紅組トリはいきものがかりだった。「風が吹いている」。
吉岡聖恵さんが堂々としててすごいなあと思った。紅白のトリってものすごいプレッシャーだろうけど、いい意味でいつも通りに見えて凄みすら感じた。NHKのオリンピックのテーマ曲だったこの曲、うちの親でも知ってるし、1回聞いたら覚えちゃう。
いきものがかり 「風が吹いている」|無料動画 GyaO![ギャオ]|いきものがかり|音楽
- アーティスト: いきものがかり
- 出版社/メーカー: ERJ
- 発売日: 2012/07/18
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いきものがかりが何かの番組で言ってた「ポップであることを恐れない」って言葉すごいいいなーとひしひしと思う。変にひねろうとしない、変に背伸びしようとしない。
— もぐもぐ(偏愛)さん (@haruna26) 12月 31, 2012
売れセンの音楽を作り続けることに揶揄もあるのだろうなあ。わかりやすいメロディだし歌詞だし、ポップであることを恐れない、もうそのまんまですごくいいよね…
— もぐもぐ(偏愛)さん (@haruna26) 12月 31, 2012
@haruna26 1stアルバムのレコ発フリーライブ(atビナウォーク)でそれ話してました。ロックバンド3人組でスタートしたけど、メジャーデビューしたからには、恐れずに直球ど真ん中のポップをつくりたいと。今でもすごい覚えています。
— takashimasutamuさん (@takashimasutamu) 12月 31, 2012
ほんとに。ポップでいることは全然楽じゃないよ。俺らの音楽、お前らにはわからないよ、って勝手にひねって背を向ける方がずっと自意識は保たれるよね。
— もぐもぐ(偏愛)さん (@haruna26) 12月 31, 2012
この言葉どこで言ってたんだろう、と思い出すと「A-studio」というトーク番組の2012年3月9日放送分だった。この番組はゲストの周辺の人たちに鶴瓶さんが取材に行って、それをもとにしゃべってもらうかたちなんだけど、サウンドプロデュースしていた亀田誠治の言葉を借りてこんな会話がされてた。
鶴瓶:亀田さんと喋った時にも出てきた言葉、「いきものがかりはポップを恐れない」。いいイントロでいい歌詞でいいメロディ。美しい曲だなってスタジオで作業しながらシンプルに涙が出ちゃうんですよ、47歳の男が、と。
―いきものがかりの3人は、ポップな曲、いわゆる流行歌になるものをつくることに全然照れがない、って亀田(誠治)さんは言ってたよ。
そうですね、やっぱり流行ったら嬉しい、と思って作ってます。いろんな音楽を聞いてきて、かっこいい音楽、とがった音楽をつくりたい人も周りにはもちろんいて。でも自分たちは歌謡曲が好きだしかっこいいと思ったんですよね。高校生の頃はなんとなくそういうのを聞いてるのかっこわるかったけど「でもみんななんだかんだ本当は好きでしょ?」って言いたい。そういうのをやってる人が逆に全然いなかったので、じゃあ自分たちはそこへ行こう、と。
2008年のインタビューのURLも教えてもらった。
ナタリー - [Power Push] いきものがかり (1/3)
みんなが通る音楽ってあると思うんです。初めて買うCDとか、子供の頃に聴いた「みんなのうた」とか。それでいいというか、それがいいと思ってるんです。
音楽に対する基本的な考え方は路上ですね。あっち向いてる人を立ち止まらせたいっていう精神は、今もずっと、曲を作る上でもライブする上でも同じです。
みんなが聴くものとか、大衆性があるものって何かしらダサい部分を持ってると思うんですよ。だからそれでいいはずなんです。例えば阿久悠さんとか筒美京平さんとか、当時歌謡曲と言われていたようなものって勘違いにせよ何にせよダサいって思われてる部分もあるかもしれないし。ホントはぜんぜんダサくないんだけど。でもそれがいいと思うんですよ。あるバンドを聴いて「かっこいい」って思うためにはある種の希少性がないといけなくて、それは大衆性から離れているってことだと思うんです。だからぼくらはこれでいいと思ってるんです。
ポップでいること、って本当は全然媚びじゃないよね。はいはい売れセン売れセン、て言ってしまうのは簡単だけど、多分きっと絶対、ド真ん中つくる覚悟って想像以上に大変だ。言い訳や予防線を捨てて、わかってくれる人だけでいいよなんて言わないで全力で"あてにいく"んだから。たまたまおばちゃんにも子どもにもウケてるんじゃなくて、そこに伝わる何かを本気で目指してるんだなって、改めて紅白のステージで思った。
ファンだけじゃないもっと広く射程を定めて、時代に対してちゃんとボールを投げているのは、それを泥臭く愚直にやってるのはただただストイックですね。大衆をバカにしないで、自分のことを好いてくれる理解してくれる人だけを相手にしない姿勢。すごく真摯だと思う。全然舐めてないと思う。流行歌を目指す、耳につく曲を、みんながなんとなくいいなって感じるものをつくるって、全然、かっこわるくない。こういう方向のかっこよさもあるんだよね。当たり前だけど。
僕はもう、何かを揶揄したり叩いたりするような物言いには与したくないなあ、という思いがあるのですよ。だって日本の音楽シーン、面白いから。紅白ではAKBもPerfumeもきゃりーぱみゅぱみゅも、ももクロも嵐もいきものがかりも、それぞれのやり方で「国民的番組」のパッケージの中で勝負するポップカルチャーとしての強度を高めていて、一方で美輪明宏さんとか矢沢永吉さんとか(紅白には出てなかったけど)桑田佳祐さんみたいな圧倒的な存在がいて。
やっぱりわたしは今年もミーハーに生きていこう。っていうか最初からそれしかないんだった。今流行ってるものに興味があるし、どうしてそれが好きなのかもっと聞きたい。うん、ミーハーに生きることを恐れずにいよう、と思った。彼らが「ポップであることを恐れない」ならわたしは「ポップを好きだって叫ぶのを恐れない」にする。と勝手に決めた。AKBもジャニーズも大好きだし、K-POPもOne DirectionもLady Gagaも聞くし、宝塚だって歌舞伎だって落語(歴史ある大衆娯楽!)だって知りたいし、夏フェスだって楽しい。
新年あけましておめでとうございます。2013年も楽しいことたくさんありますように。
追記:
いきものがかりのすごさ、もっときれいに書いてる方が。
いきものがかりの「風が吹いている」がすごいのは、やっぱり最後の「La La La…」っていうコーラスのところだと思う。あれを入れるのは相当な勇気がいるでしょ。作り手が「これは壮大なスケールの曲ですよ」ってことを自ら宣言してるわけだから。普通だったら気恥ずかしくてそんなことできないし、さりげなく作った小品ですって言ってたほうがどんだけラクか。
でも今のいきものがかりの3人にはそれを引き受ける覚悟と勇気があって、国民的な名曲を作ろうっていう馬鹿みたいな目標を掲げて、本当にあの名曲を作ってしまった。
追記の追記:
また無用な対立を…、みたいな反応があって、アイドルを揶揄するロック畑の人、の記事とかと並べて"また"なのかなあと思った。気をつけたつもりだったけどわたしの書き方が下手だったのかもしれない。
当然だけど、ポップス最高!!ってことじゃなくて、どんなところを狙うにしても自分たちのスタンスを貫くのはすごくかっこいいことですね、ってことだった。決めたド真ん中を躊躇なく撃ちぬくこと。どこがド真ん中かは自分で決めるわけで。強いて何かと比べているとしたら「みんなが好きなものを世の中で流行っているものを楽しむのがなんとなく恥ずかしかった昔の自分」かもしれない。ジャンルじゃないや。
あの頃、浜崎あゆみとかORANGE RANGEとかもっとちゃんと見ておけばよかった、と今になると思う。そこまで一生懸命聴きこんでたわけじゃないけど覚えてるってことは。だから今、EXILEも西野カナも家入レオも知りたい、何を考えてつくってるのか、誰をどうやって喜ばせてるのか、どんな風に受け止めて愛してる人がいるのか、自分とその周辺ではそこまでリアリティがないところこそすごく興味があるよってことにつながるのでした。