インターネットもぐもぐ

インターネット、おなかいっぱい食べましょう




「ワンピース歌舞伎」がバカバカしくて派手で大真面目でとんでもなく楽しかった話

スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」に行ってきた。……期待の100倍よかった。本当に楽しかった!!!

全3幕、4時間半っていう長さなんだけど(歌舞伎だからね)全然飽きなくてずっと心のなかで「うわ~~!!!すげ~~!!!」ってなってた。感動したからちゃんと書き残しておく。

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最初に発表された時に行くしかない……と思ったのは、歌舞伎っていう表現スタイルにどう寄せてくるのか興味があったのもそうなんだけど、もう存分にネタです。ワンピースが歌舞伎になるよ~って言われてもどうなるのか想像つかないから見たい。もし全然ピンとこなくてもそれはそれで酒の肴になるじゃんね。

なのでそういうある意味邪な気持ちだったわけですが、でもその邪さを完璧に受け入れて、その上でもっともっと高いところを鮮やかに見せてくれるめちゃくちゃ楽しい時間だった。主演の市川猿之助さんが記者会見で「歌舞伎はそもそもバカバカしいのが売り、バカバカしい仕掛けで楽しんでもらいたい」って言ってたけどもう本当にその通りすぎだ。マジかよ!?って演出がいっぱいある。ルフィの手が伸びる演出とかまさにそのものだと思うけど……笑

mantan-web.jp
(写真がいっぱいある)


とにかくショーとしてとても楽しい。

客席の上を飛ぶ“斜め宙乗り”(ジャニーズ的に言うとフライングですね)あり、突然滝があらわれて水に濡れながらの“本水の立廻り”(ジャニヲタ各位にもおなじみの滝での殺陣)あり、なんだかよく分からないけど無鉄砲なまでのハッピーさで客席に降りていく演出(宝塚に近づけると階段降り~銀橋渡り的な高揚感)ありで楽しいものてんこ盛りすぎる。歌舞伎めっちゃ懐広い、と思った。難しくて退屈なものじゃ全然なかった。

私は歌舞伎見るの3回目で、過去は解説か予習がなかったら多分筋書きもよくわからなかったなと思うから、まずセリフを聞いててわかるかも不安だったけど、全然問題なかった。ほとんど現代劇。でも、語尾やお決まりの言い回しは歌舞伎っぽさがちゃんとあるのでその雰囲気を感じられて気持ちよさはちゃんとある。拍子木のチョンチョンした音、見得の瞬間のパキッとした音が聞けるのも、うわ~!って単純にテンションあがる。見得、ほんとかっこいい…キメるポーズがちゃんと歌舞伎!!

原作は、読んでいった方がわかりやすくはあると思う、ってくらい。サイトに「頂上戦争編」(51~60巻)てわざわざ明記してあってすごい親切…笑 いやいやさすがに10巻分は大変でしょと思ってたけど、シャボンディ諸島、女ヶ島アマゾン・リリー、インペルダウン、ニューカマーランド、海軍本部……って意外に端折らなくてびっくりした。尺自体が長いのもそうなんだけど、1人が何役も演じることが魅力になるんだな~なるほど~!って思った。衣装もキャラクターも性別も違う人に切り替わる振り幅。



市川猿之助さんはルフィとボア・ハンコック(!)とシャンクスをやるんだけど、正直えっ?どゆこと?て思ってたけど、全部かっこいいのだ。女方かっこいいよ~~~!!ルフィとハンコック、ちゃんと同じ舞台上に並ぶし、会話する。……としか言えない。早替えすごい。歌舞伎独特のギミックの視覚的な気持ちよさ!!その一瞬で、所作や色気が変わるのもぞくぞくする。

坂東巳之助さんのロロノア・ゾロは、刀を操って見得してキメるだけでかっっっこよすぎて泣いたくらいかっこいいんだけど、同じ人が2幕ではボン・クレーをやるわけで、こっちは動きも声も全然違ってすごくキャラが立っててやりきってて見てて超気持ちがいい。ボン・クレーってそもそも見た目が歌舞伎向きすぎるな…って思って楽しい。そんなこと思ったこともなかった。

中村隼人さんのサンジは写真を見てもらえればひと目で分かるので野暮な説明はしませんね。美しい。スーツの上に裾まで引きずるような長羽織なんだけど、光沢ある布地の半身が黒いファー、袖口から覗く裏地は金、表には銀の刺繍で立ってるだけでかっこよすぎてヤバかった、羽織をひらめかせながら長い足を蹴りだしてタバコをもった手と背中を美しく曲げる。ひゃ~~。この人も93年生まれだものな……華の93年組。

エースは物語の都合上、終盤まで出番があんまりないのですが、待ったかいがある素晴らしい見せ場の連続でたまらなかった。好きになるでしょこんなの。福士誠治さん完全にメラメラの実の能力者だった。あの大事なセリフもあって、知ってるのに胸が詰まる。見せ方でいうと、歌舞伎的な殺陣をするルフィの横でエースはガチのアクションする対比作ってきてるのがおもしろかった。客演俳優として、なんだけど、ルフィとエースのスタイルの違いにちゃんと見える。

原作と全然違うビジュアルで、すっごくいい、と思ったのは白ひげ。きっちりした和服で固めて、ものすごく歌舞伎的な造形にしてきてるんだけど、白ひげすぎる。で、市川右近さん自身がとてもとても迫力があって圧倒される。白ひげだ……。筋書き(パンフレット)で「今年で市川右近になって四十年」「これから先は、師匠から教えていただいたことを次の世代に伝えていく使命がある、そういう意味でも劇中の白ひげと重なる」って言っててしびれた……。この白ひげが見せてもらえただけで満足感ありまくる。

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(外もワンピース仕様です)


そもそもワンピースって、物語の構造としては海賊がヤクザになり変わった任侠ものだから、アウトローな人間を描く歌舞伎って世界観に似合うんだな~ってしみじみ思った。漫画の中で書かれるエモくて長文のセリフが、口上として音になるから舞台の上で浮かない。

尾田栄一郎さんから寄せられた言葉にも、歌舞伎は格式高い伝統芸能というイメージがあるけれど「大衆に向けられ、世に反する『かぶき者』達を描くことに端を発した総合芸術」「実は僕の目には、歌舞伎役者の方々が海賊に見えてしかたないのです」という一節があるし、坂東巳之助さんは「子どもの頃から原作読んでて絶対誰かが歌舞伎でやるだろうと思ってた」って言ってるし、思ったより当事者としては近しいのかもしれない。その感覚を、見ているうちに客席も少しずつ共有していく感じがした。


かなり分厚い筋書き、本当に内容が充実してて、これを読めて理解できるだけでもうれしい。静的なものを舞台の上でどう解釈するかのプロセスに興味がある。「正気なの?」(原文ママ)ってところから制作陣もはじまっているこの舞台を作る中で何を考えていたのか読むと、歌舞伎っていうノウハウの凄みを感じる。コンテンツに負けないし、コンテンツを歪めない。

たとえば、麦わらの一味の登場シーンは歌舞伎の『白波五人男』の勢揃いなんですよ。やっぱり歌舞伎の人間でなきゃできないものが散りばめられている。歌舞伎を知っている人が見れば「ああ、なるほど。こうやって歌舞伎よりに持ってきたんだな」と思ってもらえるんじゃないでしょうか(市川猿弥)

歌舞伎十八番の『暫』や『毛抜』のように「すごい」「かっこいい」と理屈抜きに楽しんでいただければいいんじゃないでしょうか。漫画は現代日本で生み出されたエンターテインメント。歌舞伎から磨かれていった感覚が漫画になりアニメになった。今回は、それをもう一度歌舞伎に戻す作業だと思ってワクワクしています(坂東巳之助


女方についてもおもしろかった。
そもそも、男性だけが舞台に立つ歌舞伎の文脈で女だけの島「アマゾン・リリー」を選んでることもおもしろかった。

はっきり言って“オジサン”が(笑)漫画のなかの女性を演じるわけですからね。(中略)決してコスプレショーにしてはいけないとも思うので、顔も体型も原作に寄せることはできないけれども、原作とは違うけれども、やはりナミだな、サンダーソニアだなというものが、どこか臭ってくるようにしなければいけない。そこは、女方の色々な技術を駆使して、乗り切っていくしかないだろうと思っています(市川春猿

歌舞伎の女方には、本物の女性に近づくのではなく、別の方法で女性らしさを出すというひとつの理念がある。リアルではなく嘘のほうに持っていくこと(中略)その理念に則った方法で、『ワンピース』のキャラクターも演じることができるのではないかと思うんですね(市川笑三郎


よく漫画原作ものに言われる「原作に忠実」って言葉についてもいろいろ考えた。
ピンクの着物で前帯のナミは艶やかで、甲冑に身を包んだ白ひげはあまりに白ひげだけど、原作に忠実かって言われると別に違う。でもとてもいい。当たり前だけど、どれだけ造形を近づけるかじゃないんだよなって思った。じゃあその言葉の本質はなんなんだろうなー。リスペクトがあるかないか、と言えば簡単なのだけど。きちんと咀嚼して、こちら側の文法できちんと再構築する努力が伝わってきたのが、ずっとドキドキしてた理由かもしれない。新しい物を見ている。

しかも現代語で上演する。だからこそ歌舞伎とは何なのかが問われると思うのです。歌舞伎俳優は歌舞伎俳優として存在を自問自答する。でも、それはあくまでも俳優側の思いであって、見てくださる方は理屈抜きで楽しんでいただきたい(市川猿之助

おそらく歌舞伎というのは、四百年前からこうやって、その時代その時代の“今”を作品にしていくという取り組みをしてきたのだと思います(市川弘太郎

ちびっこ連れた家族連れ、一緒に来た友達とコレクション缶バッジ交換する男子グループ、おそらく普段から歌舞伎を見ておられるのであろうおじいちゃまおばあちゃまのご夫婦まで、客席にはいろんな人がいて、いろんなところでいろんな会話が生まれてて幸せになった。「初めて歌舞伎見に来たけどこんななんだね」とか「わたしは漫画を存じあげないのだけどお好きな方から見たらいかがなの」とか「他の演目でもあんなふうに水を使うんですか?」とか。楽しい。新しいものに触れるのは楽しいね。

「歌舞伎らしさ」ってなんなんだろうな~。思い描いてた歌舞伎!な部分と、こんなことやっちゃうんだ?っていう部分のバランスがよくて、違う演目も見たくなったし、歌舞伎っていうジャンル自体への興味も強まった。たくさんの歴史がつながって今に至ってて、今も新しくなってるのすごい。もっと知りたい。


新橋演舞場で11月25日まで、まだ平日はチケット買えるみたい。
16時半開演なので多くの勤め人は定時後じゃ間に合わなさそうですが、でも絶対すごいもん見たなって思えるよ……!

www.onepiece-kabuki.com


追記

市川猿三郎さんのブログの演出解説がとてもよいです。blogs.yahoo.co.jp

ここに「値段」と 「登場人物の変化」によって 時間の経過が歌舞伎的に
短縮表現されているのです。

ですから、60万ベリー ○百万べりー ○千万ベリー 1億ベリーという 
本来はこの流れがあるのだと ご解釈下さいませ。

短縮されている中にも その間の経過を ご覧のお客様に 想像頂くというのは
歌舞伎では使われる手法なのです

さらに ルフィーが登場してから麦わら一味の各自の名乗りは 
ご存じ『白浪五人男』の「つらね」であります。

途中のナミの名乗りの肌脱ぎは、もろ弁天小僧菊之助の応用、
チョッパーで人形からの変化の登場あたりは これまたご存じ『義経千本桜』の応用ですね(笑)

なつかしのWeb拍手を設置した

魔が差してWeb拍手を設置しました。
右のサイドバー(PCだけ)と最近のエントリの記事下に入れた。これです。この無骨な容姿。

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まずWeb拍手のサービスを申し込むところでWeb1.0感がありすぎて目がギラギラしたし、お礼画面のテンプレート選ぶのもスーパー楽しすぎたし、これだけでこんなに楽しめるなんてちょっとおめでたい人間すぎる。
「そんなとき、『web拍手』ならクリックするだけでその気持ちを伝えることができるのです!」うんうん。

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web拍手公式サイト

コメントもらえるだけでハッピーですごい。秘密のメッセージっぽい。ラブレターもらえて幸せになる。あとみなさんいい感じに顔文字とか使ってくれて謎の一体感がある。こ、これが承認欲求…!?!?

わざわざブログにコメントするほどでもないし、Twitterでリプライ飛ばすほどでもないし、もちろんメールアドレスに送るほどでもないけどちょっと何かしら言いたいことってあるから、結構おもしろいかもしれない。いや、すぐ飽きそうな気もするけど……笑 でもしばらくは逐一見ておきます。なぜかテンションが上がる。

iPhoneからWeb拍手押すの、すごい興奮する。我々はあの頃の未来に生きているのだ……。

10回連続で拍手したのにお礼絵もないんですか!? って怒られたので(なつかしすぎ)まだちょっと遊びたいな……。取り急ぎ、3回連続で叩くとそれぞれ違うテンプレートが出るようにした。どれも素晴らしいね。。あるある、わかるわかる、わかるよ……。

まだask.fmで消耗してるの?Web拍手の時代を取り戻そう!!って気持ちになってくる。わたしも無駄に拍手したい!!タグをコピペするだけなんてホームページ制作初心者でもカンタンだね!

インターネットすきだな~~ずっとすきだ~~!インターネットがある時代に生まれてよかった。

聖地巡礼ってこういうことだったのか(鳥取・岩美町「Free!」の聖地に初めて行った)

鳥取岩美町に行ってきた。アニメ「Free!」の聖地巡礼。初めて行った、やっと行けた、超~~~楽しかった!!!

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初めて来た場所なのにそんな気がしない、って一緒にいる子と何度も笑った。「知ってる……」「ここ知ってるね……」を何回も繰り返した。全然知らない縁もゆかりもない場所なのにここで起きた(ということになっている)何かを知ってるし覚えてるしなつかしいし、不思議な感じだった。2013年に1期の放送があって今、だから実質3年越しの遠距離恋愛の成就ですよね。

これは恋ですか?そうです、これは恋です。

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観光協会が5月に始めたばかりのバスツアーで回ったんだけど、ものすごく良心的で恐縮してしまうくらいだった。朝10時に鳥取駅に集合して、鳥取砂丘に行って、浦富海岸で遊覧船に乗って、おまけでイカスミソフトを食べて笑、作品に出てくる場所を1つずつまわってくれる。歩ける。写真撮れる。ガイドさんに解説まで聞ける。これで夕方までまるっと過ごして3000円……! す、すごすぎる。なんかすみません。
Articles|岩美町観光協会|鳥取県|Rock Beauty|山陰海岸ジオパーク

岩美、ずっと行きたかったんだけどなかなか行けなくて、それは距離的にそれなりにあるのもそうなんだけど、やっぱり人が住んでいる場所だから“聖地”が点在してて、土地勘もないし、山と海に挟まれた起伏ある集落だし、当然交通手段も限られてるし、個人で行っても回るのがそこそこ大変そうだな~と思ってたから。だからこういうツアーありがたすぎる。会話をちらちらと漏れ聞いたり、ガイドさんや記者さん(日本海新聞の記者のおじさまが一緒に参加していた)(優しい)に聞いてた限り、私たちと同じような理由で初めて来たっていう人がそれなりにいたと思う。

Free!聖地巡礼は大いなる先人のみなさんによるすごーく細かい情報がネットにたくさんあるのでここからは雰囲気だけ。


というわけで鳥取駅から朝は始まる。行ったよ、「すなば珈琲」!!!噂の激混みスタバも見学した。混んでた。朝から。
バスに乗って出発する。かわいい。昔使われていたボンネットバスなんだって。

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鳥取砂丘も思い入れがありすぎる。前日にハチクロを読んで予習した。野宮匠…………。


靴脱いで歩いたよ、砂丘。暑かったです、足の裏が。
ちっちゃい男の子がきっと幼稚園で使っているのであろう砂場セットを持ち込んで、せっせと遊んでいてすごくよかった。こんなに広い砂場すごいね~楽しいね~!わたしも無駄に触ったりすくったり蹴り飛ばしたり風に散らしたりする。海が見える。

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遊覧船も楽しかった。日本海は太平洋と全然違う色をしている。緑も青も深い。

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岩美町へ移動する。劇中で出てくる「隣駅」を通ったりする。怜ちゃんが走るところ。
岩美駅。わ~~そのままだ。

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田後地区へ。
主人公の住んでいる地域はこのあたりで、位置関係はともかく、1つずつの建物や施設や景色はかなり正確に元ネタがある。なんだか新しい感覚だった。どこを見ても「えっ……ここはどこ?」って気持ちになる。次元の壁がゆるゆると溶ける。

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七瀬遙さんと橘真琴さんの家の場所を見て胸が詰まってしまった。本物だ。いや本物なんだけど。そもそも何が本物なのか。こんな普通の場所に(ってあえて言うけど)こんな気持ちを抱かせる、京アニ様のロケハン力。。

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七瀬遙さんと松岡凛さんがすれ違う踏切がよすぎた。現実感がすごい。いやフィクション感がすごい?なんて言えばいいのかわからない!!!


聖地巡礼という言葉は知っていてもそんなようなことをするの初めてで、来る前ちょっとドキドキしてた。なるべくひっそりとしていようというか、正直迷惑じゃないのかな~とうっすら不安があった。だってどこも住宅街で、生身の人がちゃんと生きてる。フィクションの世界を持ち込まれて勝手においしくいただかれてもどうなのかしら……とちょっと思ってた。土足で踏み込んでいるような。

岩美町としてはその点めちゃくちゃオープンなスタンスで、町内どこでもコスプレOKだし(ごく普通に歩いてるし写真を撮っている)(高校生のコスプレでスーパーでお酒を買ってるおねえさんとか笑)至るところで関連商品を売ってるし、ここでしか買えないポストカードやグッズもある。でもそれは観光施策としての話で、人はどう思ってるのかな、という意味。

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港から少し上に上がったところにある遙さんの家の裏(と、便宜上言う)から、また海に向かって降りていく時、近くの家のおばあちゃんが家の前で海藻を干していた。目が合って会釈して「邪魔じゃないですか?すみません~」って言ったら「大丈夫よ、今日は人が多いのねぇ。暑いから気をつけてね」って返された。「これ何してるんですか?」「今ね、日が出てきたからわかめを干してるの」。……うわー、こ、これは。アニメの外側で彼らがこういう会話しているリアリティがすごい。これは生きてる。七瀬遙も橘真琴も生きてる気がしてきた。

岩美は入り組んだ海岸線がとてもきれいで、このあたり一帯が国立公園なので、バスツアーのガイドさんと別に、景色がよい展望台などでは地元のボランティアの観光ガイドさんがいる。一般の観光客には植生や土地の成り立ちや景観について話すのだと思うけど、Free!で来ている女性が多いことは当然みなさん知ってる。

自分の祖父のような年齢のおっちゃんが「春はあの島のてっぺんに菜の花が咲くんよ、ほら、真琴ここから電話してたろ?きっと花咲く季節はこっから見て、きれいだなーって思っとるわ」って、まるで近所の子のことを話すようにナチュラルに言うから、無駄に感動してしまった。おっちゃんはアニメ自体はちゃんと見てないけどどんな景色が出てくるかは知ってる、みんな話すと喜んでくれるからうれしい、あっちには凛がお墓参りに行く道があるから行ってきな、って笑った。はーい、って返して、なんだかこの返事、田舎に来たみたいだなと思った。

海の目の前の民宿に泊まって、オーナーのおじさんや遊びに来てた漁師のお兄さんたちと話した。お店の人とか遊覧船の係の人にもちまちま聞いた。「まぁよくわからないけどいいんじゃない?迷惑じゃないし、楽しそうだし」「女の子ならみんな歓迎だわ!あはは」「ずっと気になってたんだけどああいうの地毛なの?東京の子はすごいなぁ」(コスプレの話)(違います)


なんだろう、うまく言えないけど、媚びてるというよりうまく利用しているようですごくよかった。現実は強固だ。フィクションに負けない。生きてる生きてる。いろんな人が生きてる。

好きになってもらうきっかけがなんであれ、実際に足を運ぶまでの引力を持つって確かにすごいことだなって思った。毎日のように新しい人がこの場所に出会う。知らないのに知ってる。来てるみんながみんな同じ感情をどこかで共有してる。喋らなくても同志感がある。むしろこんなに甘えてしまってよいのか……?と別の意味で不安になってくる。この人たちには圧倒的に日常なのに、それはわかってるのに、私たちには非日常でフィクションでファンタジーで夢みたいな場所だ、いやいやいや東京に帰ったら社会復帰するんだぞ!!!

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2日目は1つ向こうの駅のロケハン場所に行こうかと思ってたんだけど宿を出るのが遅くなったのと、帰りの時間が早めだったのでいろいろギリギリになりそうであきらめた。だらだらと劇中で七瀬くんと橘くんが歩いて高校に向かっていた道(高校があるという設定の場所もあるので、通学ルートが分かる)を歩いて駅に向かった。道端で草を刈っていたおじいちゃんに声をかけられて、二言三言話して、あっちの方行こうかと思ったけどやめたんです~って言ったら、「ちょっと待ってな」と言われた。まず干したわかめをおやつにくれた(そのままかじる)。車を指して乗りな、って言った。ドラクエみたいだ。おもしろすぎる。

窓を全開にして細すぎる海沿いの山道を走って超楽しかった。こんな道、絶対自分たちじゃ来ない。駅の写真が撮りたいって言ったら止まってくれた。実はこのへんがアニメのモデルになっててね、ファンだから来たんですよ、って言ったら全然興味なさそうだった。笑 チャキチャキとしてよく喋る運転もかっこいいイカしたおじいちゃんは、元々遠い場所で警察官をしていて、仕事で訳あって肩を壊して(!)(つい反応してしまったよね)、いろいろあって今ここにいるんだって言った。そうだそうだ、いろいろある。兵庫県との県境まで車で走って、そういえば鳥取と兵庫って隣り合ってるんだ…ってことに驚いた。驚いてたら、東京のもんは~、って怒られた。覚えたよ。もう忘れないね。


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辻村深月の「ハケンアニメ!」って小説がある。今見たらKindleになっている。遅すぎる!SHIROBAKO放送時に電子化していれば!!

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

タイトル「覇権アニメ」(派遣じゃない)の通り、監督、プロデューサー、アニメーター、そんないろんなアニメの制作側の群像劇。登場人物にもわりとわかりやすくモデルがいて、ユリ熊嵐とか血界戦線とか見てた人はきっとにやっとできるところが……ってまぁこのへんはいいか。この中で「聖地巡礼」のファン側のスタンスではなくて、仕掛ける側、自治体側を描くのにかなりの紙幅が割かれていて、わたしはそのパートがめちゃくちゃ好きだ。

聖地だからって何もせずに来てくれるわけじゃないし、準備するならするで“空気を読んだ”ものにしなくてはいけなくて、地元の人の思惑だっていろいろある。理解せずに過剰にサービスするだけだと、サービスされてる側の人間はその匂いをかぎとって眉をひそめる。それなのにオタクは移り気だ、「ブーム」であれば去ってしまう。

今回行ってみてわかったのは、そっか、その土地自体が好きになるんだな、ってことだ。岩美町自体に過剰に親近感がわく。もちろん普段旅行に行っても、行く前に比べたら格段に気持ちは近くなるけど、作品ていう下敷きがあるからその思い入れがさらに強くなる。なるほど、聖地巡礼ってこういうことだったのか。もう少し深くまで、違う角度まで、新しい要素まで、「好き」の矛先が伸びるのか。


冬になったら松葉ガニがあるよ、食べにおいで、って言われたから、また行きたい。そんな単純な理由で行きたくなるのでめでたい。人生楽しいことまだまだいっぱいある。


「ハケンアニメ!」のなかから、伝説の若き天才監督・王子千晴の吐く言葉。

「暗くも、不幸せでもなく、まして現実逃避するでもなく。――現実を生き抜く力の一部として俺のアニメを観ることを選んでくれる人たちがいるなら、俺はその子たちのことが自分の兄弟みたいに愛しい」

「恋人がいなくても、現実がつらくても、心のなかに大事に思ってるものがあれば、それがアニメでも、アイドルでも、溺れそうな時にしがみつけるものを持つ人は幸せなはずだ」



Amazonポイント50%還元(実質半額)なので最近Kindleで買った本

Amazonポイント50%還元セール中なので逃すわけにはいかないと走った結果&最近Kindleで買った本を貼りつけます。
Amazon.co.jp: Kindle本 ポイント還元セール: Kindleストア

書籍

武道館 (文春e-book)

武道館 (文春e-book)

なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか (角川EPUB選書)

なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか (角川EPUB選書)

美貌格差―生まれつき不平等の経済学

美貌格差―生まれつき不平等の経済学

幕が上がる (講談社文庫)

幕が上がる (講談社文庫)

まんが

波よ聞いてくれ(1)

波よ聞いてくれ(1)

東京タラレバ娘(2)

東京タラレバ娘(2)

応天の門 1巻

応天の門 1巻

こいいじ(1)

こいいじ(1)

かごめかごめ

かごめかごめ

どぶがわ (A.L.C. DX)

どぶがわ (A.L.C. DX)

コンプレックス・エイジ(4)

コンプレックス・エイジ(4)

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)

トクサツガガガ(1) (ビッグコミックス)


もっと買ってるかと思ってたら案外……?もうKindleがあるかないかが読む優先順位に直結してるなって思う。

最近は映画やドラマや戯曲の脚本の体系的な作り方に興味があっていろいろ読んでて、それは図書館で借りたり古本買ったりが多い。

アラサーの教養としてスピリチュアルデビューしてきた

アラサーの嗜みといえばスピリチュアルなんですよ。
いつからかわかりませんが、そういうことになってるんです。

……というわけで、オーラ・リーディングにいってきた。オーラ! その甘美な(そしてうさんくさい)響き!


大好きなおねえさんが「オーラを読んでもらった」って言っててそれだけでめちゃくちゃ気になっていたのですが、よく聞いたら前世は男色の浮世絵師だとか中国の女帝だとかぶっ飛んだことを言い出すものだからあまりにおもしろすぎて、いつかわたしも人生経験として(訳:酒の肴にすべく)行かなきゃ!と、ずっと思ってた。とはいえ、結構なお値段するのと、何よりやはりスピリチュアルな霊言を敬虔に拝聴するイタさ(ってあえて言うけど)に微妙な抵抗があって教えてもらったサロンのWebサイトをブックマークに登録するだけで止まってた。

そこから数ヶ月のあいだに、まぁいろんなことがあったのだ。予期せず。オンでもオフでも。いろんな意味で人生に迷いすぎてお先真っ暗な上に仕事が大変に忙しい時期が重なって、呼吸も眠りも浅すぎる時期を乗り越え、ようやく人間らしい感情を取り戻して一段落したところで思い立ったのであった。「今だ、たぶん今こそオーラ読んでもらうべき」。


オーラ・リーディングとはなんぞやというと、人間を取り巻くエネルギーの色や様子を読んでもらう行為です。いろいろ突っ込みたいところはあるでしょうがこれ以上の説明はいたしません。今回おうかがいしたた先生(って言い方で正しいのだろうか)の流派では、人間のオーラには7層あってそれぞれ最大3色で構成されてる、とされている。占いではなく思考・感情分析、行動特性の要素の洗い出しみたいな感じで、未来を予知とかはしてくれない。あと基本的によい面を見たアプローチ。脅すようなことは言わない。行く前はどんな顔してればいいのかめちゃくちゃ不安、というかこんな歪んだスタンスで足を踏み入れていいのかと思ってたんだけど、めっちゃ、楽しかったです。90分楽しみまくった。


正直言って自分が言われた内容を書いたところで他人にはまったくおもしろくないわけだけど雰囲気が伝わるように少しだけ書いておく。こう書くとすごい適当っぽいけど実際にはもう少し、なんというか、それっぽかった。友人各位はもっと聞きたかったら直接聞いてください。

  • 現世で一番強く出ている過去線は「日夜歌い続ける原始時代の沖縄の巫女」
  • 「人間の要望を神様に伝える役目だったんですが、どんどん要求が大きくなっていくわがままな調整に四苦八苦してて、そのうち神の怒りをかって島ごと沈没しました」「(何その全然神々しくない中間管理職……)」
  • 「何代か神職で転生したものの、日常に起伏がなくてつまらないので俗世に降りてきたみたいです」
  • 自発的な欲望や情熱がうすくて、外からの刺激で動いてるので、好きなものをどんどん増やしていかないと精神が死にます
  • 感受性的な意味でPA機能が発達してるのでいろんな創作物や表現を一気に浴びてもわりと処理できる
  • 唾液の分泌が少ないのでよく噛んで食べましょう(いきなり具体的になってびっくりした笑)
  • 「正直別に悩みとかないし結構幸せなんですよね~」「そんな感じですね~」(はい)


「まぁあの頃巫女だったから仕方ないな~」ってたいていのシーンで使えそうだし(?)今後の人生に便利でよさそう。巫女、キャッチーですごい気に入った。現世では死ぬほどミーハーに生きてるので「日常に起伏がない」と仰せの過去の魂を供養できるようますます頑張っていきたい。あと「よく噛んで」は本当にそうなので、医学的にもそう言われているので、笑ってしまった。オーラでこんな具体的な身体面まで言ってくると思わないでしょ。それから、関係を読んでほしい個人名を出すと2者関係を見てくれるらしくて、同じセッションを体験済みの友人知人はその「なるほど」感がおもしろかったと言っていた。わたしはそんなことできるなんて知らなくてお願いしなかったのですが。時間は結構たっぷりあるのでその時の悩みや聞きたいことに応じていろいろその場で質問できる。

聞いたこと全部メモったらA4の紙何枚にもなるくらいになってすごいおもしろかった。自分が普段ぐるぐると答えなく考えている自分のことを他人がガリガリ言葉にしてくれるの気持ちがよい。それが例え詭弁だとしても。

……そう、ここがポイントで、占いも含めて、結局それが真実かどうか根拠があるかどうかって実は関係なくて、言語化されて何かがスッキリした感覚を得るのが大事なんだな!って思った。言葉では納得できるけど、行って聞いて初めてわかった。友達に愚痴ったら返ってくる言葉とかじゃなくて、もっと漠然と、自分の今までの人生でまったく接点のない人から投げられる言葉だからおもしろいんだな。


わたしは意地悪な人間なので、申し込む時のメールアドレスは普段使ってないやつにしたし(検索してもSNSとかと結び付けられないように)いろいろ言われてる間もあえて自分がこれかな?って思う方向とあえて違う方にハッタリかましてみたりしたけど、それでもわりと「わたしにはわかる」表現でいろいろ言ってくれるので、おお~、ってなった。だから全部信じる!とかじゃないんだけど……。とはいえ、よく考えるとある程度はうがった姿勢ではいるけど、わりとピュアに信じてる部分もあるかもしれない。人間の科学でこの世のすべてが解明されてるってことはないだろうし、自分には感知できない視野や周波数のようなものもあってもおかしくないのでは?って思ってるところはある。


しかし、自分について自分で深めてくことになるから、結構質問力が問われてスリリングだった。アイドルの握手会では好きな女の子について知りたいこと聞きたいこと喜んでほしいことを一生懸命考えるけど、自分に対して真正面から考えたり言葉にすることとか別に正直ない。漠然と考えてたとしても、その自己分析を他人にぶつけることは全然ない。なので、そういうチャンスとしてもなかなか勉強になった。時間もったいないし何かぼんやりしたことでもいいから糸口を……と思ってぺらぺらしゃべりだしたら、あ、確かにそういう時いつも微妙に引っかかってるわ、って話しながら気付いたりする。思考のプロセスとしてはブログ書くのに似てるな~ってちょっと思った。ブログも、書きながら「そんなこと考えてたのか」って自分でなる。

あと、最終的に印象に残るのは自分で納得できる部分なので(そりゃそうだ)自分を語るあるいは理解する言葉のパズルのピースが手に入ってよい。なるほど~そう表現したらいいのか!ってなる。結局どう言われようと自分の解釈なので。外からのある意味無責任な言葉と、自分の中にある感覚と、バランスをとって消化できる精神状態であれば結構楽しいイベントだと思う。


というわけでアラサーの教養、楽しかったです。でもスピリチュアル、ハマると危険そうだというのもなんとなく身体でわかった。外から言葉にされていく気持ちよさ、求めすぎると怖いな。思考力が弱っていくというか「そういうことか」で終わらせてしまえる展開も容易に想像つく。

……そう思うと、Twitterで「よくぞ代弁してくれた!」を束ねてRTやふぁぼで義憤を晴らしたり正義をふりかざしたりするのも構造的にはスピリチュアル的な気がしてきた。程よく取り込むと自分の考えも深まって気持ちよいけど、ずぶずぶと共感できるもの(あるいは真逆に、糾弾できるもの)を探すのにハマっていくと徐々に盲目になっているように見えるし、自覚はなくても周りから見ているとこわい。誰かが先回りして言葉にしてくれるといい意味でも悪い意味でも乗っかりやすい。

スピッツ「横浜サンセット2013 劇場版」、夢みたいだった

人生で一番天国に近かったライブが、2時間半の映画として閉じ込められてた。
スピッツ「横浜サンセット2013」。

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スピッツ 横浜サンセット 2013 -劇場版- | SPITZ OFFICIAL WEB SITE

2013年9月に、横浜赤レンガ倉庫であった野外ライブがDVD/Blu-rayではなくなぜか劇場版になった。終わった瞬間、早く円盤になってくれ…今の夢みたいな時間を目の前でもう1回巻き戻したい…と思って倒れそうだったのに、そのまま音沙汰なくてあきらめてたけど、まさか1年半も経って映画館で見ることになるなんて思わなかった。

内容はスーパーシンプルに、ライブの最初から最後まで、MC含めノーカット。バックステージやメイキングのようなドキュメンタリー要素も全然なし。拍手の音で始まって、照明が落ちて終わる。目の前でライブがそのまま繰り広げられる。横浜の海を一望できる場所が、昼から夕方に、そして夜に少しずつ色を変えていくのが全部見える。あ、そうだった。こういう1日だった。この日は。


スピッツ、みんな名前は知ってるだろうし、知ってる曲もいくつかあるだろうし、カラオケで歌ったり聞いたり、人によっては学校で歌った経験もあるだろうけど、演奏しているところそういえばちゃんと見たことないなって人、少なくないと思う。それはテレビにほとんど出ないというのが大きいのですが。ライブは少なくない回数やってますが、ドームのようなものすごく大きなところでやるわけでもないし、ファンです!という気合い入った人以外の人が足を運ぶ機会ってそりゃ少ないよなって思う。興味はあるよ~という人が出会う機会あるとしたらフェスくらいでしょうか。

スピッツのライブ、超かっこいいのだ。CDを軽々超えてくる。楽器の生音ってこんなにパワーがあるんだなって思う。音楽に関して素人だからむずかしいことはよくわからないけど、それでもなんだか正しく音を浴びてる気がして、いつだってとても楽しい。幸せになる。イヤホンからカーステレオから有線放送から流れるいつもの曲と情報量が全然違う。

だからめっちゃ見てほしい。
おっきいスクリーンで映画館のいい音で、夏の終わりの横浜にトリップしてほしい。

……まぁ正直ね、ものすごく淡々とライブしてる映像が続くからそんなに起伏あるわけじゃない。例えばわたしは前日あんまり寝てない日に行ったのと、最初の数十分でドキドキしすぎて心臓が疲れて途中眠くなった(正直)。あとやっぱり映画館で座ってるから声出したり踊ったり手をあげたりできないのはもどかしい。「めっちゃ好きな曲きたあああああ」って気持ち押し殺すしかない。でもぼんやり聞いてたりまどろんでる時間すら気持ちよすぎた。だってずっと音が鳴ってるし目をあけたら色が変わってるし、閉じ込められた時間全部が夢みたいだよ。


草野マサムネさんは、びっくりするくらいずっと青年のおもかげがあって、本当にすごい人だ。


空も飛べるはず」「チェリー」「ロビンソン」、世に広く知られてるのって、少し前の曲だと思うけど、もう50歳が見えてきたおじさんたちの作る曲、ずっとかっこいい。最近のライブだと「さらさら」にいつも胸が詰まってしまう。この日のセットリスト、オリジナルアルバム14枚を網羅してたんだけど、別に意図したものじゃなかったらしい。


スピッツ / さらさら - YouTube

もう何百回と聞いてるはずなのに毎回ライブの度に泣きそうになるのは「運命の人」。これはほんと……生で聞く説得力がすごい。励まされすぎてる。バスの揺れ方で人生の意味がわかるし、愛はコンビニで買えるし、神様は自力で見つけるのだ。


スピッツ / 運命の人 - YouTube

あとこのライブで最高だったのは「渚」。曲の終わりに延々と続くドラムがあまりに波の音だった。何度も重なる。今ここで聞くのがなんて似合ってるんだろうって鳥肌が立った。


スピッツ / 渚 - YouTube

それからやっぱり、「夏が終わる」。この年の夏は本当に本当に暑かったんだった。当日は台風が近づいていて、この週末を超えたら急に涼しくなるのかもなって思ってたんだ。
「暑すぎた夏が終わる、音もたてずに」。


見ながらこの1年半のことがフラッシュバックしてきて頭がぐらぐらした。2013年は人生でいちばん幸福な1年だったんだけど、そこから月日が経っても思ったよりずっとハッピーだ。ずっとハッピーなんだよね。幸せは途切れながらも続くもんね。


スピッツ / スピカ - YouTube


観に行くまではなんだかんだ円盤になるのかなって思ってたけどそんなことないみたいだ。パンフレットを読む限り、モノとして残したくない理由があって、だからこういう形でもう一度見せているように思える。くそう、辛い時に何回だってこの日を反芻したいのに。許されない。

でも幻みたいに残響みたいに、美化された思い出として甘く頭に残り続けるならそれもいいかもしれないね。


スピッツ 横浜サンセット 2013 -劇場版- | SPITZ OFFICIAL WEB SITE
新宿と梅田、週末を待たずに終わる予定だったのに追加上映が決まったから、まだ土日で見られるよ…! そのあと、5月までかけて全国いろんなところをまわる。

ああ、やっぱりスピッツ大好きだな。ずっと特別だ。
ライブが終わるといつも、次またこの光を浴びるまでちゃんと生きなくちゃ、って、背筋が伸びる。

代々木上原のモスク「東京ジャーミー」に行ってきた

代々木上原にあるイスラーム教のモスク「東京ジャーミー」に初めて行った。

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東京ジャーミー・トルコ文化センター

小田急線の車内から、ホームから、見える高い塔。モスクがそこにあるのは随分前から知っていたけど、いつか行きたいな~って思っててやっと足を踏み入れた。……めっちゃ、楽しかった!!行けてよかった!!また行きたい。
※建物内の写真も入れてたのですが「撮影はOKでもWebに載せるのはNG」ですよと教えていただいたので外しました、すみません……。調べたらきれいな写真、たくさん出ます。


ニュースで聞くいろいろに辟易して、動画はもちろん画像でも見るのが辛くて、でも目をそらすのもなぁと思って、違う方向からそういうことについて歩み寄りたいって気持ちで思い出したのが電車から何度も見ているミナレットだった。東京ジャーミー、調べてみたら毎週土曜と日曜の14時半から、予約不要で無料で見学会をしてることがわかった。Webサイトに服装規定とかちゃんと書いてある。1人でいってもいいものなんだろうか。どきどき。

服装について
礼拝場は、イスラーム教徒が礼拝を行なう神聖な場所です。女性の場合は、ストールかスカーフをご持参いただき、長袖・長ズボン、ロングスカート(足首まで隠れるもの)など身体の露出の少ない服装でお越し下さいませ。女性のショートパンツ、キャミソール、タンクトップ、レギンス等での入場はご遠慮下さい。男性もハーフパンツやタンクトップはご遠慮下さい。階下のホールでは、女性のスカーフは不要ですが同様の服装を心がけてください。


5分前くらいについたら数十人いて、結構多くて驚いた。いつもこんなものなのでしょうか。「いつか」行きたいな~、の「いつか」は今だろうと、わたしのように思った人がたくさんいたのかもしれない。自分の親くらいの世代の夫婦、レポートの種として見に来たような大学生、これから出かけるんだろうなって感じの若い女性、子ども連れも。近くにいた小さな男の子がアラビア語を学んでいるようで、目につくもので分かるものを読んでいて格好よかった。「お母さん、これは数字の4だよ!」

東京ジャーミーの歴史自体は古くて、1938年から。ロシア革命(!)の影響で中央アジア地帯から東へ東へ、海を超えて日本まで、やってきたトルコ系の人々によってはじまったんだって。ま、まさかロシア革命なんて言葉を聞くなんて思わなかった……。こんな感じで歴史とか風俗習慣についていろいろ説明してくれる。

今の建物は2000年に建てられたもので、16世紀のオスマン・トルコの伝統的な建築形態を再現したものなんだそうです。高いミナレットと、美しい礼拝堂がある。本国から100人以上の職人を呼び寄せて、「水とコンクリート以外のほとんどすべて」を現地から取り寄せて、数年がかりで建築したんだって。大理石の床、彫刻された木の細工、鮮やかな色のタイル、全部本物だ。全部とってもきれい。おみやげも売ってる。

1階にはホールがあって、この日は子どもたちが何かを教わってた。壁にあるアラビア語のカリグラフィーのアートがなぞりたくなるくらい素敵。初夏のラマダン(断食)の時期はここで毎日、日没の時間からトルコからやってきたシェフによる本場のトルコ料理が振る舞われるそうで、イスラーム教徒じゃなくてもウェルカムらしい。行くしか……!


30分くらい見て回ったところで、2階の礼拝堂へ行く。

大学の卒業旅行でシスティーナ礼拝堂に行った時に「あ、これは世が世なら入信するわ」って1秒でくらっときたことを思い出す。今よりもっと色や光が少ない時代にこんなにキラキラしたものを見たらどんな気持ちになるだろう。「神々しい」って言葉の意味はこういうことなのか、ってなった。神様の世界はどんな場所でしょうか。(中高はプロテスタントの学校に通っていたけど、カトリックとはこう違うんだなっていうのもそのとき思った)。

……それと同じようなことをこの日も感じた。ニュアンスの違ういろいろな青、大理石の白、優しい金色、いっぱいある。息を詰めて見る。ステンドグラスがきれいだ。チューリップやバラの装飾がかわいい。アラビア文字が踊る。この日は曇りだったけど明るく陽光がさすとまた雰囲気が違いそうだ。

少しずつ人が集まってきて礼拝が始まる。女性は2階のバルコニーのようなところ。とはいえ別に1階に女の人が入れないわけではなくて、現にわたしたち見学の人たちはみんな1階の後方に座る。子どもがいっぱいいるのがかわいい。前半はみなさん礼拝堂の好きな場所で自由にお祈りする。子ども、普通に遊んでる。同じくらいの歳の子とじゃれたり寝っ転がってくすぐりあったり、走り回ったりしてる。別に静かにしなくてもいいのか~~。この空間にいるってことが大事みたいだ。

そのあと、メッカの方向に向かって1列に並ぶ。さっきまでわらわらしてた子どもちゃんたちもパパの横に並んで、まねっこする。くねくねしたり隣の子の肩をつっついたりしながら、ひざを折って床に額をついて、口の中で言葉を復唱する。

なんかよくわからないけど泣けてきてしまった。。なんだろう、当たり前のようにちゃんと毎日が続いていることに? 宗教って日本だと馴染みがないけど、思想や信念以前に日常や生活に普通にあるものなんだよな~。「1日に5回、礼拝するのは大変じゃないですかってよく聞かれますけど、みなさんごはん1日3回食べたりおやつ食べたりするのに苦労してる感じします? 精神的な食事のような感覚、お腹じゃなくて心を満たすもの」って言ってた。

あと、クルアーンは音楽的なものって話もおもしろかった。礼拝でも朗々と読み上げる。アラビア語で理解するのに意味があるっていうのは排他的な意味ではなくて、音で聞くものなんだって。聖書は(わたしが知ってる限りは)そういう感じはあまりないけどどうなんだろう。お経はそうかもしれないね。


イスラームは誤解されてるところも多くて、という話にも当然なって、今ニュースを騒がせていることの話にもなって、いろいろそういうリアルな視点が聞けたのも興味深かった。過激派組織がやってることは許されることではなくてイスラーム教がテロを認めてるわけでは当然まったくなくて、でも前提として偶像として“描く”ことに対する感覚は全然違うわけで、とか。

普段考えないことをいろいろ考えたし、何より荘厳で美しくて背筋が伸びる場所で、元気でた。無料でこんなにいろいろ見せていただけてありがたい。肌の露出を抑えるし女性はスカーフが必須だし、普段からマフラーしている冬場は見学しやすいかも。


オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)

オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)

わたしがイスラームに興味を持ったかなり大きなきっかけがこれ。すっごく好き。
多民族国家を束ねる合理的で先進的な知恵がオスマン帝国にはあって読んでて気持ちがいい。

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

あと最近話題になったこの本も、Kindleになったから読んだけど「そうだったのか!」ばかりで超興味深かった。脈々と、アフガニスタンタリバーンがどうつながっているか、何が違うのか、そういうところを知るだけで全然違う。

東京ジャーミー・トルコ文化センター


とてもざっくりした感想だけど、やっぱり宗教的な場所に行くの好きだな。いろんなものにちゃんと理由があって別に知らなくてもいいんだけど知ってると世界の見方が少しだけ変わる……可能性がある。

普段見てるものだともしかしてアイドル現場ってある意味自分にとっては“宗教的な場所”に近いかもしれないな? ってぼんやり思いながら小田急線のホームに戻った。キラキラしてて、外から見たら理解できないこともきっとあって、それでもわたしたちは1つの方角を見つめて愛と祈りを注ぐ。あなたに幸福がありますように。