インターネットもぐもぐ

インターネット、おなかいっぱい食べましょう




インターネットの苦さに舌が慣れたのでおいしい

インターネットにものを書いて流してどれくらいになるだろう。
書いては消し、サイトごと消し、名前すら消し、だから一貫してないんだけど。それでも行動としては10年くらいはしている気がする。


最近、漫画やイラスト、小説をお仕事で生産してる友達たちが、ネットの反応見ると心がざわつくから基本あんまり見ないようにする!と言ってるのを聞いて、正直、まぁそれが普通の反応だよなあと思った。だって見た人は、好きに言うもの。もはやインターネットの画面なんてテレビと同じだもん。あの子最近かわいくなったね、男でもできたのかなー、あーそうかもねこないだ週刊誌に出てたよね、とか、あの人最近かっこよくなーい、わかるーなんか急に老けたよね、がっかり、なんて芸能人に向けるのとおんなじだ。向こうに届くなんて思っていない。ただこっちで話題にするだけの、コミュニケーションじゃない単純な感想。


ブログやらTwitterやらでいろいろ垂れ流しているけど、顔も知らない誰かにキツく言われるの、嫌じゃないの、と何度か聞かれたことある。結論から言ってあんまり嫌じゃない。今まで気づかなかったけど耐性あるのかもしれない。あるいは、ただのネット脳なので慣れている、と言ったほうが適切かも。
多分、書いたものと自分自身がまったく別物だと思っているからだと思う。自分の表現物に対してあーだこーだ言われて怒ったり傷ついたりするのはそれが自分に向けられているように思うからだよね。そこが切り離されてるとわりと冷静に1人の外野として見られる。2分前のわたしはもう他人、な感じで、書きものに対してもあまりまとまった執着がない。勝手に解釈されていくのとか断片に切り崩されていくのとかTumblrに流されていくのとか、案外悪くない。それが嫌な人がいるのももちろんわかる。わたしだって書いてる以上自分が思ってることはきちんと表したいなとは思っているわけだけど、それでも届かない部分、そこにも同じくらい興味がある。


はてなブックマークは殺伐としていて好きだ。この言い方はなんだけど、好き。
直近の2つのエントリとか最近別の場所に書いたものとか、思ったよりたくさんの反響があって驚いた。もらったコメントは全部読んだ。Twitterエゴサーチもする。批判的なものでも語気が強いものでもおもしろく読んだ。ふむふむと納得したり、そうかぁそこが言葉足らずなんだなと思ったりした。マゾヒズムかもしれない。わかる、必読、良記事、考えてみるとそういう共感のコメントのほうが読み飛ばしている気がする。自分の考えてることを肯定されることより、足元脅かされる方がスリリングでしあわせな気持ちになる。


「これからは組織や肩書きより、個人の共感の時代!(キリッ」みたいに言うけど、それはどうなのかなーと思ってる。共感してくれる人を集めるより集まった共感で腐らないことの方が、批判を浴びないこと見ないようにすることよりもうまい距離感をつかんで栄養にしていくためのしなやかなやり口の方が、ずっと大事だと思う。わたしも苛ついていると反射的に噛み付いてしまうこともあるのでなんとも言えないのだけど、たいてい正気になると反省する。別にそう思う人もいていいよなーって。違うこと考えてて当然だよなーって。言葉にはしてなくてもここに引っかかる人が他にもいるんだろうなーって。


共感を集めることなんてもはや超簡単だ。デパ地下でお惣菜買うくらい簡単。それよりはきちんと下ごしらえされた批判とか、老舗の風格や年季を感じる罵倒とか、油っぽくてチープなディスとか、そういうものの方がインターネットっぽくていい。リアルでそんなこと言ってくる人はいない。
わたしが書いたものなのにわたしの存在なんて抜け落ちた状態で読んでもらえるの、インターネットおもしろいと思う。あの人が書いてるからイイネ!とか、マジでつまらん。知ってる人同士で持ち上げるのとかマジでつまらん。マイナスの方がおいしい。その苦さを癖にできるかできないかは、やっぱりあるよね。


だから万人に薦められる遊びではないなと最近ぼんやりずっと考えていた。おもしろい人はおもしろいものを書いてもっといろんな人に見せつけてやってほしいと思ってきた。でも簡単にすすめるのはよくない気がしてきた。はじめてゴーヤを食べた小学生のとき、こんなまずいものを食べさせるなんて嫌がらせなのかしらって思った。人によってはそれはすり減らすものの方が大きいのかもしれない。少なくとも、わたしは自分との現実の関係がくっついてこない、コンテンツそのものに対する無責任な感想を読むのがとてもすき。普段見えないものあえてぶつけられないものに手を突っ込んでいる感じがすごくいいなと思う。こうでなくっちゃ。顔のない文字の世界は。
インターネット苦いけど今はもうおいしい。チャンプルーにして食べますね。