読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

インターネットもぐもぐ

インターネット、おなかいっぱい食べましょう




ソーシャルなメディアとしてのブログと、画面の中の“聖地”

アイドルブログのコメント欄から見る、「君と僕の関係」 - インターネットもぐもぐ
こちらの続きです。なので、アイドルブログの話しかないのであらかじめご了承ください…!

先の記事にはこんなことを書きました。

  • AKBのメンバーブログの“コメント欄”だけをテキスト分析しました
  • ブログの役割として書き手と読み手のやりとりより、読み手同士の仲間意識の醸成の方が意味合いが強そう
  • 女の子ユーザーがかなり多い(っぽい)
  • 愛の言葉をかけるのではなくて、みんなで一緒に応援していく場所
  • 「君と僕の関係」→「君と僕“たち”の関係」へ

ではそれを踏まえて、ひとつの事象について見ていきます。無理やり学問ぽい言い方をしたときに前回が「テキストデータを利用した社会学」だとしたら今から書くのは「家から一歩も出ずにフィールドワークした文化人類学」、です。

アップデートされ続けるコメント欄

AKB48のブログを延々と観察していて、気になった事象のひとつが、何人かのメンバーのコメント欄が長期間にわたって生き続けていることでした。この分析は6月9日の選抜総選挙の直後のエントリだけを選んでコメントを取得したのに、数ヶ月経った日付けのコメントもガンガン載ってるんです。更新され続けている。見ている人、書き込んでいる人がいる。なにこれ。コメント欄になるべく早くコメントする争い(ってほどでもないですが)はもちろんあるのですけど、更新され続けてるって、何事。

読んでみると、どうも本文の内容について言及し続けているわけじゃないみたい。昨日のMステがどうこうとか、新曲のPVがかわいいとか、昨日の握手会とか、今度出るフォトブックの話とか、そういうのが繰り広げられていました。ますます不思議。そして出てきたコメント。
「聖地の皆様こんばんは!」
なんと、「聖地」ですって!?聖地といえば、宗教ですよね。あるいはアニメのロケハンしたところとか。
いろいろウォッチしていくと、一部のファンのあいだで特定のエントリのコメント欄が「聖地」と呼ばれている現実を知りました。えっすごい…何が起こってるの?

“チラ裏”と“聖地”

メンバーの特別な日や反響が大きいエントリ(総選挙順位発表の後や誕生日、その他なにかおめでたいことがあった日など)のひとつが、ファンのあいだで自然発生的に「聖地」になっているようです。本来のブログの文脈を完全に離れて、固定ハンドルネームを持つファンたちによって交流に使われてるんですね。要するに、掲示板です。むしろ、チラ裏です。日記です。“握手会レポ”です。新曲やテレビ出演の感想です。

って言われても、具体的にイメージしにくいと思うので、具体例を。いくつか引用したものを貼り付けます。

f:id:haruna26:20120206032655p:image:w450

“聖地”、なかなかまとまってないんですよね…捕捉しきれていないものもある気がします。一番下に今“発見”されているものは紹介しますので、興味ある方はそこから見てくださいね。実際繰り広げられていることを見てもらうのが一番インパクトがあるので、リンクを踏んでほしいのですが、みなさまお忙しいと思いますし、わたしが多大なる(そして無駄な)情熱を持って調査したフィールドワークの結果を羅列していきます。

  • “聖地”の条件

AKB48のメンバーは総選挙のお礼エントリ(形態素解析の対象にしたもの)がなっているものが多いです。ファンの声の反映感があるからかな。指原莉乃さんというメンバーは1日ブログ100回更新にチャレンジしたときの、100個目の記念エントリ。彼女は「ブログがおもしろい!」っていうのが最初に人気が出た要因のひとつなので、ブログって戦場がとっても大事です。2010年12月の記事のコメント欄が、未だに生きてる。なんと、もう1年以上前! NMB48のメンバーは誕生日です。まだ成立して日が浅くて、彼女たちの個人的な記念日を祝うことが重要なのかしら。
と、まぁ各自何らかの理由で「聖地化」されます。このメカニズムが謎なのですが、もちろん運営側がトップダウンで決めるわけでなく、誰がどのように号令をかけているのかもよくわかりません。そして「聖地の移動」もあります。例えば2011年6月以前は別のエントリのコメント欄が「聖地」だったんですね。これも何らかのきっかけで、「移住」が決まる。ほんとに、「住人」ですよねえ。

  • チーム名がある

大島優子さんの“聖地”住人は、自らを「チームU*1」と自称していることが見て取れます。柏木由紀さんは「チームゆきりん*2」、北原里英さんは「チームうなちゃん*3」、指原莉乃さんは「チーム指原*4山本彩さんは「チームSAYAKA*5」、渡辺美優紀さんは「チームMilky*6」、木下百花さんは「チーム百の花」です。それぞれちゃんとある。連帯意識以外の何者でもありません。そして、女神様(応援するメンバー)のことは「姫」という呼称が使われてます。「Mステでも姫ばっかり追ってしまいます」「今日は姫の生誕祭*7ですね!」。“聖地”なのに神様じゃなくてお姫様なのね!おもしろいーー。

  • 人気があるメンバーが必ずしもあるわけじゃないっぽい

探しまわったのですが、例えば前田敦子さんには“聖地”がない、あるいはそう呼ばれていない、です(あれば教えてください)。総選挙では1位ですし彼女は絶対に「信者」を抱えてるはずなのに、ない。逆に、木下百花さんの名前は、聞いたことない人の方が圧倒的多数だと思います。言いだしっぺの人がいるかいないかなんだと思うんですけど、成立条件が不思議。

  • コメント数を重ねる喜び

先に提示した画像を見ると「70000コメおめでとうございます!」とかあります。「コメント数が増えていくこと=わたしたちの愛の証明」なんですね。カウントアップされていく恍惚。というわけで、テキスト解析でも、「聖地化」したところから先は対象に加えませんでした。「毎日朝と夜に見に来るようになってしまいました」って言葉が書かれたり、します。コテハン*8で「娘が熱を出しました」「最近仕事で忙しくてなかなか聖地に書き込む時間がありません><」なんてコメントがついて、それにあたたかく返信する様子がいくつも見られます。あまりに、個人的すぎる。全然、ブログのコメント欄でやる必要ないじゃん!!と突っ込みたくなる。それでも蓄積してくのですよ。ファンのみなさんの交流の様子が。ファンサイトの掲示板、じゃなくてここで展開するんですね。

  • 握手会で対面

「チーム○○のみなさん、会場でお会いしましょう!」「姫は今日も素敵でした!」「握手会行かれた方おつかれさまでした、レポありがとうございます」。“聖地”に集っている住人のみなさんは握手会という場所で対面コミュニケーションをしているみたいです。AKBの握手会はチケット購入時に時間で区切られた部が指定されていて、持っているチケットの条件によっては待ち時間が長いのです。その時間でごはんを食べに行ったり、おしゃべりしたり、しているみたい。こうなるとブログのコメント欄は、もう本人のためじゃないんですね。情報発信!アイドルとファンのインタラクション!とかじゃない。ファンによるファンのためのコミュニティなんです。すごいすごい。こんなブログの使われ方してるなんて想像もしなかった。

  • チーム○○同士の交流がある

メンバーの誕生日が近くなると住人たちは近隣(姫と仲の良いメンバー)の“聖地”に出張して、お誕生日エントリにコメントをつけることを要請します。あと、新年のご挨拶とかもあります。

チームうなちゃんの皆様こんばんは。
チーム指原の××です。

今日はお願いがあってお伺い致しました。
11月21日はうちの姫さまの誕生日なんです。

そこで当日現行ブログの方(聖地ではありません)にコメントを頂けないでしょうか。

1人1回でかまいませんので可能な方は是非ご協力お願いいたします。

突然の勝手なお願いで申し訳ありませんが、りのりえ愛でよろしくお願い致します。

失礼致しました。

ゆきりん、チームゆきりんの皆さん

明けましておめでとうございます♪
旧年中は、りえちゃん聖地に暖かいコメント
ありがとうございました!

先のエントリで指摘した「君と僕“たち”の関係」の出現を、完全に、100%体現してることが目の前で起きてる。家族意識というか仲間意識というか。もう、擬似恋愛じゃないですよね。僕個人に目をかけてほしいわけでなくて、彼女の魅力を伝えたい!活躍してほしい!元気で頑張ってほしい!そんな感じです。ファン、というより、サポーター、って感じですね。もちろんあらゆるファンビジネスのものすごく基本だと思うのですけど、それが個人のサイトや空間ではなくて、彼女たちに直接ひも付いたブログ、のコメント欄なんて場所に表れてるのがおもしろーい。

うわーアイドルヲタク気持ち悪い、わけわからん、ないない、って思う人ももちろんたくさんいると思うんですけど、それでもこの人たちとっても楽しそうなんですよ…!「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」っていう結婚式の一節が頭をよぎります。つい全文引用してしまった。どんなときも全力で彼女を見守り応援し勇気づける運命共同体である、そういう印象をひしひしと感じる。
あまりにソーシャル。なんという結びつきの強さ。実名とかハンドルネームとかどうでもいい。共通の愛の対象を愛でながら楽しく過ごせる。もう多神教の世界。ゼウスだけじゃなくて、アフロディーテとかアルテミスとかポセイドンの神殿にも、参拝にいくんですよ!天体の動きに応じてね!!
もはや、聖地はディスプレイの上に。ケータイでもパソコンでもいつでもどうぞ。「神の国は近づいた」。画面の上で、信仰告白をして、祈りの言葉を綴って、巡礼する。感動だわ。

(蛇足すぎますが、この点ジャニヲタとの比較もすごくおもしろい。女の子アイドルはけっこう「みんなであの子を応援していこう!」って感じで同じ子のファン同士つながるんですけど、ジャニーズの場合は好きな男の子が同じなのを極端に嫌がるケースが珍しくありません)

なんていうか、「インターネット文化人類学」の可能性すら感じるレベルですよ。異文化たのしい!アメーバピグに「林間学校」しにいったこともありますがそれもとても楽しかった。ディスプレイの中が“聖地”にも馴染みのない世界にもなるインターネット最高だなあ。わたしはこうやって、ページを延々と繰っていって自分の知らない文化の片鱗を垣間見る作業を愛してるよ!全然飽きないや。もっと知らないところを見たい知りたい覗きたい潜りたい。インターネットがあれば、新しい世界いくらでも発見できる、いくらでも遊べる。すごい。ワンダーランドだ。
他のアイドルや声優やアニメやバンドなんかで、似たような“聖地”っぽい現象はあるんですかね?あったらぜひ教えてください。最近、ヴィジュアル系バンドがAmeba各サービスで繰り広げる文化を聞いて、もう感動しました。めっちゃおもしろいんだよー!!!!この話もいつか蓄積したら書くかもね!!

わたしはアイドルヲタクにもファンにもなりきれていなくて(女の子たちは大好きだけどいろんな意味でもっと投じている人たちがいるから軽い気持ちでそんなこと言えない!!)あくまで「ウォッチャー」なんですけど、こういう風にウォッチしやすいのって、すごいいいなー大事だなって思いました。
翻ってモバイルソーシャルゲームの世界は、すごくウォッチしにくいですよね。最初にアカウントつくってから、盛り上がっている震源地に降り立ったりやハマってる人たちに潜り込むまでのハードルがあまりにも高い。


……(前のめりになりすぎて締め方がわからない)。
うーん!長くなりすぎた!ごめんなさい!これこそチラ裏ですねわかります!!!


■巻末参考資料:2012年1月現在にわたしが“発見”している聖地一覧

*1:ゆうこ、なので

*2:愛称そのまま

*3:うなぎ犬に似てる!と突っ込まれてるメンバーなんですね…

*4:ひねりはない

*5:彩、という名前でさやかと読みます

*6:ニックネームがみるきー

*7:劇場で誕生日のメンバーを祝うこと。有志のファンで生誕祭委員が結成される

*8:継続的に同じ名前使ってます、本名でない人のほうが当たり前だけどずっと多い