インターネットもぐもぐ

インターネット、おなかいっぱい食べましょう




ディスプレイのあっち側とネットワークの内側と「君と僕の関係」

タイトルは最新アルバム「ここにいたこと」収録の一曲より。


AKBのメンバーのブログコメントの分析をしてるんだけど、ちょっと行き詰まってるので、自分が今考えてることとやりたいことを(自分のために)整理しとこう。書いてたらいいこと思いつくかも。
「アイドルっぽさ」と個性と構造主義 - インターネットもぐもぐ
去年やってたのは「アイドルっぽさってなに?」ってもので、見た目から入った。
で、普通の女の子が国民的アイドルへの階段を確実に歩んでくのが、テレビのこっち側からわかるのがすげーおもしろいなって思った。
5年前と今と顔つきが全然違う。でもこの人たちはどこまでいってもプロっぽさがないんだよね。
プロのアイドルっぽくはないけど、アイドルっぽい。なんだろうそれは、と思って。
アイドル性とプロフェッショナル性は別軸なのかなーと思って。
それでそこそこおもしろい結果は出たんだけどきれいにまとめられなかった。
時間軸で明らかに「アイドルっぽさ」が上昇してる図はきちんと見えた。


今年はそれを踏まえてやりたいなと思ったのはタイトル通りです。「君と僕の関係」。
アイドルブログはコメントがすごくおもしろいなって思ってて、なんでかと言うと、コミュニケーションっぽい体をなしているけど違うから。
ただその「見立て」ってすごく重要だよなあ。
それからファンレターと違って他の人がどんなこと書いてるかもわかるし、コメントの付き方・勢いのようなものもわかるから、すごく書きこむ気になる部分もあるんだと思う。触発される。
それに、手紙をしたためるのとはずいぶんハードルも、自分との距離も違うでしょう。
ケータイから、パソコンから、ごはんを食べながら、授業を受けながら、帰りの電車に乗りながら。
きっといろんなシチュエーションで、みんな。


まだコメントの規模がそこまで多くないときには質問に答えたり、なんらかのインタラクションあるんだけど、数千件数万件規模になる(!)とそりゃないよねえ。それでも書く人はたくさんいて。
その感覚ってどういう感じなのかなあってすごく気になったのです。
アイドルオタクって少し前まではだいぶキモチワルイというか、ニッチなひとたちのニッチな嗜好って感じだったと思うけど、特にAKBのメンバーのコメント欄はかなり女の子が多いんだよね。アメブロが圧倒的に強いのもあるし、みんなケータイなんだと思う。
友達のブログを見るように、特別にスペシャルにだいすきなこの子、だけじゃなくていろんな芸能人やタレントを眺めてて。コメントを自ら残すほど強い気持ちがあるのはそんなに多くないのかもしれないけど。5万件もひとつの記事にコメントがつくような状況で全部コメント読んでるかなんて全然わからないじゃん。というかむしろ読んでなさそうだよね。文字数にしたらどんだけあるんだよ!って話で。
それでも書くモチベーションと伝えたいこと…というより、伝わったら嬉しいな、と思ってること。

AKBに入れ込んでて(わたしレベルでファンとはおこがましくて言えない!)楽しいなおもしろいな日々お祭りだな、と思うのは、トップに君臨する秋元康および運営陣の手のひらのうえで、メンバーもファンも一緒になって転がされてるところ。その意味でファンとステージの上の女の子の距離って近いんだよね。で、その場当たり的な判断による予定調和のうえで予測ハズレのガチを見せるところ。錯綜しすぎ!箱庭的だけどずっとLiveなんだよねえ。ふしぎ。
「会いにいけるアイドル」は物理的な手を握るって行為も大事なんだけど、そのとりまくシステムの見せ方もすごいなって思う。


例えば、とある子のとあるポストのコメント欄が完全にファン同士の交流掲示板になっていてとてもおもしろい。
こういうケースっていくつかあるみたいで「聖地」って呼ばれてるみたい。
コテハンで交流するような感じ。その紐づいてるエントリとはまったく違う話を平然とファンだけで、進めてるの。
「新曲いいですよね!」「この番組に出てたなんとかちゃんまじかわいかったです」「うちの娘が大ファンで…」「髪切ってかわいいです、もっとすきになりました〜みなさんどうですか?」とかとか。すごい。
ブログ聖地の存在とは|たーじまはーるのブログ
NMB48メンバーのブログ聖地|Amebaグルっぽ


距離感を知りたい。テレビより握手より、ときにはブログは強いかもしれない。
彼女たちのためによりも、自分のために書いてるのかもしれない。
ネットワークのなかでうごめく彼らは、文字を打ち込んでサブミットするだけで、そのうちの幾許かのひとはお金や足すら動かしていないだろう。
ライブにも握手会にも行けない場所に住んでいる高校生もいるかも。お金があればなぁ、と歯がゆく思っているかも。
「あっちゃんゎあたしのあこがれです☆☆まぢだいすき!!」みたいな子もいる。
この子は「アイドルファン」の自覚どれくらいあるのかな?まるで友達のブログにコメントするような感覚なのかな?
と思えば、「優子ほんとうに愛してる。一生君だけを見てるよ」(あくまでイメージ)みたいな一般の人が最初に連想しちゃいそうな「アイドルに入れ込んだひとたち」も散見することは簡単。
いろんなレイヤのひとがいる。
ブログのコメント欄はカオスで雑多でお互いにだだ漏れで、もはやアイドルの彼女たちのためだけじゃない。
そうやってネットワークのなかでぐちゃぐちゃと個が動きつつ、なんとなくルールができたりして、うごめいていくさまはすごくいいね。素敵だ。


「マニアは収集する、オタクは評論する」と言ったのは斎藤環さん*1だけど、その欲望の違いにはとってもぞくぞくします。
もはや、お金かけなくたってオタクにはなれるんだもの。
武器はケータイなんだ。高度な情報戦。ハイコンテクストなお遊び。
結局ブログはつながるために使われてなくて、つながったらいいな、見られてたらいいな、のチラリズム、だよね。
発信と受信なんて、そんな割り切れるものじゃないよな。割り切れたらつまんないよなー。

*1:[http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480842950?ie=UTF8&tag=haruna26-22&linkCode=shr&camp=1207&creative=8411&creativeASIN=4480842950:title=『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』]