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21年間でわたしの血と肉になった本たち(読みもの編)

「わたしの血と肉になった本」シリーズ後編です。
前回はフィクションを中心に紹介したので、今回は「読み物」。(文芸でも実用でもないからどうわけたらいいかわからなかった)
時期で言うと高校〜大学がほとんど。前回同様「3回以上参照した」を基準にしました。


読みもの:
★的を射る言葉

森博嗣は一時期ものすごくすきでした。
よしもとばななと並んで影響うけたな。思想の言語化の深度、がすき。
言葉の使いかたとかレトリックとか、よくも悪くもいろいろ言われるけど!
そういうわかりやすい部分だけじゃなくて、文章の積み上げかたが好み。
小説は好き嫌いわかれると思う。わたしのベストは『四季』四部作。『スカイ・クロラ』もなかなか。あれは単行本のジャケット勝ちだよねー。
鈴木成一さんの装丁は本当にすきです。以下も彼が手がけたもの。


わたしは父親がド理系なのだけど、似ているんだよね、どこかが…。
森博嗣名古屋大学の建築学部で教授をしていて「お小遣い稼ぎで」小説書き始めたひと。
ガレージ一面に鉄道模型組み上げてたり(!)家の庭に人が乗れるミニ鉄道ひいてたり(!!)工作エッセイもおもしろいです。
ものすごく多筆なことで知られてます。仕事量やばい。ブログもエッセイも小説も新書も。
もう活動休止に向かってるはず。「お小遣い」がものすごいことになったよね…


彼の本でたぶんいちばん多く開いたのはこれ。
小説でもなんでもない。ただの言葉集なのですが、しびれます。ともすれば屁理屈になるものを、きれいにくるっと言葉にしてる感じ。
負けました、と思う。かなりシニカル。気持ちが萎えそうなときに読んで、意識をハッキリさせる。


“やる気なんてあってもなくても、やれば同じ。”
“「最近の若者はやる気がない」というのは、「正直なのでやる気のある振りができない」という意味です。”
“作り上げることよりも、作り続けることの方がはるかに難しい。”


★ことばと自然

鈴木孝夫さんの本は高3の秋、受験前に一気に読んだ。
さっきAmazonで調べたんだけどこんなにも読みつくしていることに我ながら驚いた。。
模試の問題かなにかになってた『ことばと文化』を読んで「なにこのひとすごい…!」と思って高校の図書館でかたっぱしから借りた。


最初に読んだのは『ことばの人間学』。
受験勉強すると見せかけて図書館に通って、周りが問題集を開くなか黙々と読んでたw
もうね、こういう人が世界で、日本人として、40年前に活躍してたことに元気が出る。
簡単に説明するのが申し訳ないので、未読の方はぜひ読んでください。
言語学者で海外の大学でもいくつも研究員してるのに英語礼賛にならないで、日本がいかに世界を「ことば」で相手にしていくかを論じてます。
今読んでもかなりおもしろいと思う。データや世界の状況は多少時代感じるけど、論はとても刺激的。
わたしの学部の外国語カリキュラムは彼を中心に組み立てられたって、入学してから知ったのです(知らなかったよね…)。
題名がすてきなのです!目についたものをどうぞ。
『日本人はなぜ英語ができないか』 『人にはどれだけの物が必要か』 『教養としての言語学
『日本人はなぜ日本を愛せないのか』 『武器としてのことば』 『日本語教のすすめ』 『言葉のちから』
(著作リストはこちら)


で、本題。
CWニコルという作家兼自然保護活動家との対談です。どうせならあんまり有名じゃない著作を選ぼうと。
当時はとても教育分野に興味があったから、本当に興味深く読んだ。
ニコルさんは日本に帰化してるウェールズ出身のイギリス人、鈴木先生は海外の大学でバリバリ戦ってきた日本人。
長野県に森林を購入して森を再生する活動をしているのだ。「アファンの森財団」
本当の国際化ってなんだろうって考えさせられる。逆説的に、日本をもっと知らなきゃって強く思う。
未来あるひとたち(子ども)に対してどう接するべきか、という問いは未来を期待される側としてどう生きようか、になる。
自然や環境のトピックも深く関わるのでまたスピリチュアル系な感じもありますが、とても読みやすいです。基本的に対談本がすきなんです。
なんだかよく覚えていないけど、いくつか印象的なセクションがある本ですね。はい。


★17歳のための世界と日本の見方

いわずと知れた松岡正剛さん。
西洋とは何か、東洋とは何か、 言語とは何か、文化とは何か、 そういうすべての初歩的な話。


この本は宗教論として、おもしろいと思った。
スジャータ」というコーヒーにいれるミルク、あるでしょう。あの名前の由来、知ってますか。
中高でキリスト教教育をわりとまじめに、細く長く受けてきたことは教養としてとてもよかったと今振り返って思う。
わたしは美術がわりとすきなのだけど、宗教画を中心とする西洋の絵画史の流れは、
聖書の説話やメタファーを知ってるだけでずいぶん連想できるものが多くなる。
今いちばん興味があるのは、ヒンドゥー教とチベット仏教。
シヴァ神の像は、美術館で見るとうっとりしてしまう。いろんなポーズがあるんだけど、どれもだいすき!ときめく。
ちなみにイスラームの基礎の話だとこれがおすすめ。ちょっと新しめの時代ですけど。
野蛮でも非理性的でもないどころか、すばらしく効率的で多様性にあふれた国家像。
オスマン帝国とか神聖ローマ帝国からは学ぶべきものがたくさんあると思うよ、ほんとに。

『編集というのはもっと広い意味をもっている言葉だろう、 もっと深い作用をあらわしているだろう、と思っています。
 人間の近くや思考や表現のすべてにかかわっているくらいに、広くて深い。
 たとえば何かを思い出すこと、スピーチをすること、スケッチをすること、 みんな編集です。情報を組み合わせて、繋いでいる。
 これらのことをひとことでいうと、「新しい関係性を発見していく」ということなんですね。
 私は、編集によってさまざまな人間文化の成果を関係付けたいんです。』

とあるように、関係性や意味付けがメイン。
世界史あんまり知らなくても面白く読めると思います。17歳向けだし、文体もやさしいです。
他に歴史系の読み物だと中公文庫の『物語 ○○の歴史』シリーズはかなり幅広く読んだ。これも高校時代だなあ。
中公文庫って、借りてる人めちゃくちゃ少なかったなあw 『イタリアの歴史』 『スイスの歴史』あたりはおもしろかった。


★新世紀メディア論

大学2年の秋。この時期に読んでよかったあ、心から思った本のひとつ。もやもやしていたものが一気に明るくなった。
やっぱりわたしが興味があることは紛れもなく「パブリッシング」と「編集」だってわかった。
進むべき方向を薄ぼんやりだけど確信を持つことができたきっかけのひとつ。
言いたいことは、当時のわたしのツイートに任せます。

.@kobahenさんの「新世紀メディア論」を読んだ。結構前に読み終わってたんだけど、何からまとめればいいのかわかんなくて。
もう、ものすごく面白かったです。とりあえず、私がもやもやしていたものに対して、いろんな方向から掘り下げてくれたような感じでした。
今読んで本当によかった。いい意味でも悪い意味でもわかりやすかったです。
なんだか、納得してしまったけど、納得してしまっていいのかなとも思った(うまく言えない)。


ここからは書評というより感想。長くなりそうですが、興味ない方、ごめんなさい。
興味があるのはメディア、というとじゃあマスコミとか出版社志望なの?と言われるのが面倒で、
最近は、ウェブとコミュニケーション、という言い方をしていた。
でも私が漠然と考えてたことはあってた。私が気になってるのはやっぱり"メディア"だし"出版(=publishing)"だなあ。


ミクロがマクロを作るんだ、という当たり前のことが顕在化するのが私がWEBというツール(?)に強く惹かれる理由なんだと思う。
あくまでもメディアは文字通り媒介であって、そこに生まれるcommunityとかcommunicationが本質なんだってわかって、周辺の動きまで面白い。
ただ、自分はこういう、どうやってつながる・つなげるのか、導線を考えるようなことはすきだけど、
じゃあ自分がpublisherになって何を発信したいのか、はわからない。
それは私の弱さ。たぶん、あるんだと思う。あるからこんなにときめいてるんだと思う。で、そのときめきって大事だと思う。
何度も言ってるけど、「わくわく」と「どきどき」は似ているけど少し時間軸と主体が違うんだよね。
この本はその両方で、興味があるってこういう状態だよなあって再確認した。
もっとミクロで言えば、Twitterに感じているのも同じ感覚。仕掛けるツールとしてとても気になってる。


2010年も終わりが見えている今となっては、肌で実感していることもいくつもあるけど
(って考えると、やっぱりこの1年はわたしのなかでいろいろ動いたよ)これ出版されたの2009年の春なのです。
TwitterやUstという固有のイメージに頼らないでここまで書けるのは、やっぱりすごいなあと思います。
みんなが“なんとなく”思ってることをきれいに文章にするのは思うよりずっとむずかしい。
小林弘人さんは自分の経験と知見からの分析がすごいなと思う。
出版業界けっこう興味あるけどなんか違う気もするなあ、っていう就活生にもぜひ読んでほしい。


★はたらきたい。

何度も言及している本。「はたらく」を考えたいひとは読むべき!
示唆的な要素、考えるタネをたくさん得られると思います。
大学生でも、すでに働いている人でも、ぜひ。


ずっと自分のなかで世の中の「仕事」に対する価値観に疑問を抱いていたものが解消した気がしていて、それは、
「はたらく」って「ワーク」よりも「ライフ」に近い気がする
という気づきだったのです。

“ですから、本当のことを言っちゃうと、新卒の面接をやる場合、
 「君がさ、これまで大切にしてきたことって何?」という、ものすごく概念的な質問で十分なんですよ。”
“「本当に大切にしてきたことは何? あるの? ないの?」 「それは、言葉になってるの?」。そういうことですね、聞きたいのは。” 


この前の記事、「はたらくってなんだ。」にも引用したけど、
わたしが社会と自分の接点を考えるうえで言語化を手助けしてくれた本の一冊。
もう何を説明したらいいのかわからないけど(笑)読んでもらえたら、わたしの脳内のある部分はよくわかると思う。
わたしは、この本に出てくる人のように「はたらく」を話せるようになりたいよ。
有名人になって自分のことを語りたいとかではなくて、自分の頭で判断して経験を消化して言葉に落としたいよ。
“かっこよく「何も出来ないやつ」になろうね。”という言葉が出てくるんだけど、これはすごく大事だけど、めちゃくちゃむずかしいよね。
出来ないことがかっこわるいんじゃないんだよね。じゃあなにか「かっこいい」んだろうね?


ずっと対談です。分厚いけどすぐ読めると思う。ウェブにもほぼ同じコンテンツが掲載されています。
書籍版だと、ちょっとコンテンツが多いです。そして装丁がいい。呼吸が深くなる。
ほぼ日刊イトイ新聞 - 「ほぼ日」の就職論。


以上、今回言及した本のまとめ。
読みもの:
★的を射る言葉
★ことばと自然
★17歳のための世界と日本の見方
★新世紀メディア論
★はたらきたい。


もう、頭の中をひっくり返したような感じだ。羞恥に近いw
前回のエントリとあわせて、これほど過去と未来ともちろん現在の自分のために書いた文章も珍しいです。
本が、というより文字がすきなんだよ!紙でも電子でもなんでもよくて、もっと読みたい。それだけ。